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 それから二年後のある日のことである。
 日高郡印南町真妻地区の有力者たちが、二階の自宅にやってきた。かれらは、御坊市と奈良県十津川村を結ぶ御坊十津川線を国道に昇格してほしいと切望していた。印南町は、県会における二階の選挙区ではない。だが、しばしば相談にやってくるため、すっかり顔見知りになっていた。
 二階は声をかけた。
「今日は、皆さんおそろいで、どこかに行かれるんですか」
「じつは、これから新潟に行くんです」
「新潟? 新潟の、どこに行くんですか」
「田中角栄先生の選挙事務所に」
 二階は大声をあげた。
「えっ! 田中先生のところに‥‥‥‥」
「はい、二階さんにもお願いしていますが、やがては御坊十津川線を国道に昇格してほしいと陳情に行くんですが、今回は選挙事務所へ陣中見舞いに行くんです」
「あなたがたは、田中先生を知っておられるんですか」
「いえ、一度も会ったことはありません。しかし、田中先生なら、私たちの気持ちをわかってくれるはずだと考えましてね」
 ひとりが、腕時計に眼をやった。
「ああ、もうこんな時間だ。急がないと、電車にまにあわないぞ」
 二階は時間に余裕があったため、御坊駅まで車で送っていくことにした。
 笑顔でかれらを見送った。が、内心、憂鬱であった。自宅にもどる途中、情けない気分になった。
〈地元に力のある国会議員がおれば、知り合いでもない田中先生のところに、わざわざ陳情にいかなくてもすむ。よし、なんとか国道に昇格できるように力を尽くそう〉
 二階は「国道昇格運動」を展開することにした。が、ただ国道昇格を訴えるだけでは迫力がない。そこで、乗用車六〇台、総勢二〇〇人のキャラバン隊を編成し、御坊市から十津川まで走行するキャンペーンを考えた。
 しかし、六〇台ものキャラバン隊を編成するためには、所轄の警察署の通行許可証を取らなければならない。それに、十津川にたどりつくためには、和歌山県、奈良県の二県にまたがるいくつもの所轄警察署の通行許可証が必要になってくる。
 二階は所轄の警察署に申請した。
 しかし、なかなか許可がおりなかった。
 二階は地元のひとたちに相談した。
「どうしましょうか」
 かれらは、熱っぽく言った。
「われわれはぜひやりたい」
 二階はかれらの強い決意を知り、大きくうなずいた。
「それでは、あまり仰々しくやらないようにしましょう」
 二階は警察署の担当者に、電話を入れた。
「キャラバン隊は、中止します」
 そのうえで、実行に移した。
 早朝、日高県事務所前にキャラバン隊が集結し、道なき道を越えて、奈良県十津川村までキャンペーンを繰り広げた。
 その夜、キャラバン隊に参加した真妻の住人三、四〇人が二階の自宅へ押しかけてきた。かれらは、口々に訴えかけた。
「なんとしても、次期総選挙に出馬してください」
 二階はかぶりを振った。
「一町内会の皆さんから『出てくれ』といわれて、『はい、出ます』と簡単にいくもんじゃありませんよ」
「われわれ全員で、考えに考え抜いてきたんです。真面目に、受け取ってください」
「わかりました。考えてみます」
 二階は「四十日抗争」以来、江アからも、たびたび言われていた。
「きみを国政に迎え入れたい。なにも田中派木曜クラブの数を増やそうということで、言っているんじゃないよ。きみのような若い力が、国会に必要なんだ」
 二階は決意した。
〈微力ながら、和歌山県の県民生活を発展させるために尽力しよう〉

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