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 平成三年十一月下旬、東京都庁の鹿谷崇義副知事が鈴木俊一知事の意向を受けて、二階のもとにやってきた。
「鈴木知事が、小笠原空港建設計画でお世話になっているので、食事でもさしあげたいと申しております。ご出席願えませんか」
 二階は答えた。
「私には、そんなご心配は結構です。それより、小笠原の空港を最初にいって来られたのは小沢先生です。ですから、それなら小沢先生や金丸先生とおやりになった方が‥‥‥‥」
 小沢一郎と鈴木知事は、保守が分裂したこの年四月の都知事選で対立して以来、断絶状態であった。
 鹿谷副知事は言葉を濁した。
「いえ、まぁ‥‥‥‥。そんなことができれば、きっと鈴木知事もお喜びになると思います」
 じつは、二階に小笠原空港建設計画を持ちかけてきたのは、自民党幹事長時代の小沢であった。
 平成二年二月、二階は、海部内閣の運輸政務次官に就任した。それからまもなく、二階に、小沢幹事長から小笠原空港の陳情書とメモが届けられた。
「小笠原に飛行場をつくりたいという陳情がきている。調査してほしい」
 東京都から一〇〇〇キロあまり南にある小笠原村に都営空港を建設する計画は、運輸省や環境庁も自然保護や財源問題を理由に難色を示していた。
 二階はしばらくして幹事長室に出向いた。
「本気でやれ、とおっしゃるんですか」
「離島のひとたちの生活状況を考えたら、気の毒じゃないか。だから、なんとか飛行場ができないものかという思いでいる」
「わかりました」
 六月、二階は運輸省として初の小笠原の視察をした。
 そのような経緯があるため、二階は、一計を案じた。
〈鈴木都知事と金丸先生や小沢先生がいつまでも仲違いをしているのは、東京都のためにはもちろんのこと、日本のためにも良くない。この機会にお互いが仲直りするように努力してみよう〉
 二階はさっそく金丸と会い、切り出した。金丸は、自民党副総裁に就任していた。
「副総裁の立場にあるひとと日本の首都東京の知事とが、なんとなく仲違いしているのは、都民にとっても、日本にとっても良くないことだと思いますよ」
「そりゃ、そうだ」
「今度、鈴木知事との食事の会に出て頂けませんか」
「そりゃ、結構なことだな。他に、どんなひとがくるんだ」
「奥田敬和先生、愛知和男先生、村岡兼造先生、西田司先生、それに運輸省の松尾航空局長、小笠原の安藤村長、宮川議長もきます」
 奥田運輸大臣は、十一月二十九日に閣議決定され、小笠原空港建設が盛り込まれた第六次空港整備五カ年計画の策定を担当した経世会の前事務総長である。村岡は、その途中までかかわった前の運輸大臣。愛知は、前環境庁長官、西田は、小笠原諸島振興開発特別措置法を所管する前国土庁長官であった。
「そうか。行こうじゃないか」
「ところで、小沢先生と鈴木都知事との間もなんとか修復されてはどうでしょうか」
 小沢は、知事選で党本部の方針に沿って反鈴木側に回った自民党都義に配慮し、これまで知事との会談に応じてこなかった。
「うん、そうだな」
「小沢先生に、このことを、金丸先生から言って頂けませんでしょうか」
 金丸はしばらく間をおくと、ぽつりと言った。
「それは、きみから小沢君に言え」
 二階は思った。
〈それがむずかしいから、金丸先生にやってもらおうと思っているのに‥‥‥‥〉
 二階は乗りかかった船だと考え、小沢に会い、要請した。
 小沢は意外にも、あっさりと答えた。
「あのとき自分といっしょに行動を共にしてくれた東京都議の皆さんもいるからね。相談してみよう」
 小沢は十一月二十六日、知事選で磯村陣営についた自民党都議八人を都内のホテルに集め、知事と会うことを説明した。
 こうして、十二月十三日昼、赤坂のフランス料理店「クレール・ド・赤坂」で昼食会が開かれることになった。
 その日、鈴木都知事は赤坂に向かう車中の自動車電話で、鹿谷副知事に対し、ぽつりと洩らしたという。
「ほんとうに金丸さんや小沢さんが、きてくれるのだろうか‥‥‥‥」
 鈴木都知事の心配をよそに、金丸、小沢は姿を現した。新聞記者やテレビ局も押しかけた。昼食会は、なごやかな雰囲気で一時間にわたって行なわれた。
 金丸、小沢の出席に骨を折った二階は、胸をなでおろした。
〈良かった‥‥‥‥〉

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