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「観光立国宣言シリーズ」

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集客産業の復権こそ、日本の国興し


西日本旅客鉄道(株)会長 井出 正敬

 

政府の経済戦略会議委員でもある西日本旅客鉄道株式会社(JR西日本)の井出会長と、日本の基幹産業と位置けられた観光について、その使命とあり方を語りあう。(平成11年4月対談)

いで まさたか
昭和34年、日本国有鉄道入社。昭和62年国鉄の分割民営化とともに西日本旅客鉄道(株)副社長に就任。平成4年同社社長、平成9年会長に就任。現在、日本旅行業協会常務理事、関西経済連合会副会長、経済戦略会議委員など歴任。

 

二階 今日はお忙しいところをありがとうございます。全国旅行業協会の会員が日頃、お世話になっておりますが、「日本の観光を考える百人委員会」のメンバーとしてもご協力を頂いていることに感謝しております。早速ですが、井手会長は、小渕捻理の経済戦略会議のブレーンとしてご活躍中ですが、まずその辺から・・・・・・。

井手 私は、平成十年八月に発足した経済戦略会議の一人として、日本経済の立て直しと豊かな経済社会の構築に向けた構想を検討してまいりました。そして、今年(平成十一年)の二月二十六日に経済戦略合議は「日本経済再生への戦略」と題した最終答申を総理大臣に提出しました。この、日本経済再生へのシナリオをまとめるにあたり、特に私は次のことを申し上げてきました。これまで、日本という国の在り方を議論するときに出てくる話は、例えば減税の実施や、公共事業の上積みなどの、配分の話ばかりだ。経済を立ち直らすことが目的であるが、再び我が国にバブルをつくってもいいということにならない。来るべき21世紀には、バブルを反省、克服し、世界にもしっかりと伍していけるような日本として、何を立国の礎とするかということをもっともっと真剣に議論すべきじゃないだろうかと。まず、どこから富を稼ぐかという議論が先にあるべきで、配分の話はその後に出るはずだと思ったからです。
二十世紀をあえて一言で表現するなら、主として重工業を輿して、良きにしろ悪しきにしろ地球上の資源を収奪してきた時代とも言えるでしょう。しかし21世紀には、地球と共生する時代が来るだろうと思います。その中で競争に勝ち残るためには、日本は日本の独自色を出すべきなのです。そのための一つはハイテクを核とする、いわゆる中小企業が中心となる得意なモノづくりを発展させていくことですね。得意の分野のモノづくり、これが無かったら日本の国は駄目ですよ。

二階 全くその通りですね。バブル盛んなころの「モノづくり」をやや軽くみる風潮を反省し、中小企業に力を注ぐべきですね。モノづくりを忘れた国は滅ぶという唐津一先生の著書を読んで感銘しております。モノづくりを一層見直し、奨励するためにマイスター制度(手工業の親方を養成するドイツの制度)のようなものを、改めて創設することも必要ですね。先ほどから井手会長のモノづくりのお話を伺って、つくづく思うことは、あの松下幸之助さんが、改良ソケット(二股)の家内工業からはじめられて、世界の松下に仕上げられたあの努力を観光関係者は手本とすべきところがありますね。

井手 全くその通りです。創意工夫と努力の積み重ねですよね。マイスター制度。今、改めて大いに検討に値することです。

「ナンバーワン」でなく、「オンリーワン」をめざせ


井手 もう一つは二階先生が前からおっしゃっているように、市場規模二五兆円と言われる観光産業です。しかもこれは地球に優しい産業ですね。私は観光業というのは、言うなれば平和産業だと思っています。

二階 まさにそうですね。平和でなければ存在し得ない産業であり、かつてのカンボジアのように、あるいは今日のユーゴのような煙の上がっている国には誰も旅行に行かない。観光産業を世界的に拡めていくことが、世界の平和と文化の発展に貢献することにつながるわけですね。

井手 21世紀は、得意分野におけるモノづくりと観光、それも「集客観光産業」というものを輿して、その二つにより日本の国輿しをすべきではないかと経済戦略合議で主張しました。結果的にそのことは中間答申に盛り込まれましたし、最終答申でも一番最後のまとめ前に一項目として加えられたのです。

二階 そうでしたね。あれは画期的なことで、すべての観光産業に携わる人々が喜んでおられるはずです。また、「モノづくりといえば、今国会に議員立法で提案された「ものづくり基盤技術推進基本法案」が成立しました。

井手 観光は、どちらかと言えばこれまで物見遊山として捉えられ、お遊びの分野に属していると思われてきました。しかし、最終答申では、日本の国是に立った、国の中心的な産業として明確に位置づけられました。その意味では、私自身、戦略会議の委員としての役目を果たすことができたものと思っています。政府方針で二〇〇〇年度未までに合計七七万人の新規雇用創出を目指すとされましたが、その内訳でも上位四番目に観光分野が位置づけられ、約九万人と示されました。

二階 あれ拝見してね、井手会長のご活躍に感謝していました。例えば、今、日本人の平均宿泊日数は、1.6泊ですが、小渕総理の方針としてそれを2泊にしようと決議されました。観光が官邸の中で正面から議論される、ようやく、そういう時代になったと思います。

井手 そうです。よかったと思いますね。基幹産業の一つに認知されたようなものです。

二階 ですから、今、不景気の風が吹いていることに違いはありませんが、こういう時代にこそ、観光関係団体や、観光関連企業が揃って元気を出して、一歩前に踏み出さなければいけない時だと思います。

井手 そして「観光」の上に「集客」をつけた「集客観光」こそが21世紀の産業だと経済戦略会議で申しました。私たちJR西日本のエリア内にも、古い歴史をもつ京都や奈良や和歌山などの観光都市がありますけれども、社寺仏閣があればお客様が来るのは当たり前だというような思い上がりがあったような気がするんですね。社寺仏閣があっても、それだけではお客様は集まらないようになってきたのです。現実に修学旅行の生徒さんはもうディズニーランドに行ってしまうわけですから。

二階 観光は、確かに景観も大切ですが、やはり、歴史とか文化とか、訪れる人に与える感動が大切ですね。それぞれの地域が魅力ある観光地として栄えるためには、地域が官・民協調で頑張ることが重要ですね。

井手 いいものがあってもお客様を集めようと努力しなかったら、私は駄目だと思っています。ある時、経済戦略会議の委員の方から「集客」とはどういう意味だと聞かれたことがありました。そこで、私は観光業を生業とする者には、良いものがあればお客様が必ず来るという思い上がりがあってはいけない、どうしたらそこに来て下さるかという努力、工夫が必要であり、そこにこそ産業としての意味があるのではないですかと申し上げたんです。集客が観光の頭についていますので、二階先生が今おっしゃったように、観光に関係する事業に携わっている皆さんが一緒になって、多数のお客様が観光に来て下さるように努力したいと思いますね。

二階 景色だとか文化や歴史やその地方のテーマパークのようなもの等を総合的にアピールする。お客様の求めにどうマッチさせるか、フィットさせるかというところが、旅行、観光を成功させるかどうかになるんでしょうね。

井手 そうですね。お客様のニーズは多様化していますからね。例えば、泊りと食事の全部がセットされた旅館の在り方でいいか今問われていますね。また、建物もどこへ行っても同じような造りでは魅カありませんよね。その土地に合ったおもてなしなど、建物も含めて独自のものがないとアピールしませんよね。那智勝浦温泉に行けば那智勝浦温泉らしい雰囲気があるとか。白浜温泉と有馬温泉とは当然、違わなければいけないのですよ。

二階 そうなんですね。駅の名前を塗り替えて、浴衣の名前を書き換えれば、どこの温泉か分からなくなるというのでは困りますからね(笑)。

井手 ですからそういう意味で、21世紀はナンバーワンではなくてオンリーワンたることが重要となります。これは他には無いのだという雰囲気づくりを、我々皆が一緒になって創造していく必要があるのです。我々がせっかく認識を深めさせた観光業が、日本の国のメインの産業になるかどうかというのは、それができるか否かに懸かっていると思うんですね。

「祝日三連休化法」実現による
観光産業への波及効果に期待

二階井手合長にもお骨折り頂いて、観光に弾みをつけようということで、祝日三連休化がようやく実現しました(※施行は二〇〇〇年から)。平成十一年の三月のお彼岸はプレイベントのような形で、三連休だったわけですが、この三連休は、やっぱり相当賑わったようですね。

井手 三連休の時のお客様の出足はやはり違うんですね。各ご家庭も「次は三連休だからそれまで行くのは待って」ということにして、三連休には余裕を持ってお出掛けになるところが多いようです。そうした気持ちが日本人の間に根付けば、改正祝日法の効果は必ず現れてくると思います。私は大変期待しています。

二階 私も三月の三連休の時、選挙運動で地方選挙の応援――二日間は和歌山に、後の一日は岩手県の盛岡の方に行っていたのですが、不況にもかかわらず、各地の観光地が賑わっているという感じがしました。

井手 ちょうど法案のご審議・採択前後に、地方自治体にも特別決議をお願いしようと思って働きかけました。最初のうちは祝日三連休化の趣旨をよく分かって頂けなかったのですが、しだいにご理解下さり、JR西日本エリアのほとんどの県と市町村に特別決議して頂きました。

二階 最初は皆さん、分かりにくくてね(笑)。「休みをこれ以上増やされたら困る」とおっしゃるので、「増やしません。休みを月曜日に寄せるだけです」と言うんですがね。だけどようやく分かってもらえて、良かったです。三日休みだと、かなり遠くまで足を運ぶことができるし、それに自分の有給休暇を加えれば、かなり楽しい旅ができるでしょうしね。

井手 それと、日本人はせっかちですから、どうしてもあくせく動く。それが日本人そのものをスポイルしているんじゃないかという気がしますし、もうちょっとゆったりすべきではないかと思いますね。三日間の休みがありますと、いくつもの観光地を巡るというだけでなく、一か所に長く留まるという過ごし方も選べます。その点で先般成立した改正祝日法は、日本人に長期滞在型の旅行を馴染ませると思いますね。

二階 観光地に二日居て、旅から帰って一日休み――翌日から体調を整えて仕事に行くこともできる。それと比べて、ギリギリまで遊んで、前の晩の十二時に家に帰ってくるというのではきついですからね。

井手 日本人は基本的に勤勉なだけに、物見遊山というのはちょっと気が引けるんでしょうね。でもこれからは、観光旅行は自分の中に活力を蓄積してリフレッシユするチャンスなんだという、ゆったりとした気持ちを持って休暇を利用して欲しいと思いますね。そうすれば、日本の国も大分変わってくると思いますし、外国から日本は特殊な国であるというような見られ方はしなくなるでしょうしね。日本が世界の中で正当に評価を受けられる国になるという意味でも、祝日三連休化は非常に意義のあることだと思いますね。

大阪湾ベイエリアの開発、
オリンヒツク誘致で閑西経済の活性化を

二階 いろいろな観光施設が次全できていく中で、今度大阪にユニバーサルスタジオ(USJ:Universal Studio Japan)ができますね。

井手 USJは、関西で大きな目玉として、いわゆるベイエリアの開発、大阪湾周辺をエリアとして開発しようというプロジェクトの一つの大きな柱として考えております。この構想が出されたきっかけの一つは東京ディズニーランドの集客力に注目したことですね。あそこには年間約一六〇〇万から一七〇〇万人くらいのお客様がお見えになる。しかも修学旅行のお客様まで行かれるという。我々としても、大阪湾ベイエリアにそれくらい楽しいものが欲しいということで、ユニバーサルスタジオへの期待は非常に大きいですね。

二階 ロスアンゼルスにもあるようですが、フロリダのユニバーサルスタジオを私も二度ほど見学したことがあります。大人にも子供にも実に楽しいものですね。あれならお客様は遠くからでも来るだろうと思いましたね。

井手 今、関西財界を挙げて、早くUSJを完成しようと取組みを進めています。私たちの会社では、USJへのアクセスの便を図るため桜島線(西九条−桜島)の安治川口と桜島の間に新駅を開業させますが、安藤忠雄先生にその設計をお願いしました。これは既に完成しておりまして、もうすぐ大きな帆が張られましてね、船が浮かんでいるようなデザインなんですが、このような駅は世界に例がないのではないでしょうか。本当にユニークなんです。ぜひご視察頂きたいと思います。

二階 もちろん、喜んで。駅ごと船に見えるようなデザインなんですね。

井手 これはひょっとすると何か特別な賞を戴けるかもしれないと密かに思っているんです。安藤先生も大変ご自慢のようです。

二階 改築の時期に入ってきた駅もまだまだ多いでしょうから、地域の特性を生かしたデザインで再活性化の目玉にしたいものですね。

井手 そうですね。これからの駅は地域と一体になって作らなければいけないと思います。私たちの京都駅(ビル)も、単に改築するだけでなくて、どのようにすれば世界有数の歴史的文化を持つ京都の将来の玄関口としてふさわしいものにできるか、ということを大事に考えて造りました。その結果、私どもの利益にもなり、お客様も喜んで下さり、街全体も良くなったと思います。

二階 新しい京都駅を拝見してびっくりしましたよ。新装なった駅の機能、ショッピングコーナー、レストラン、劇場等必ず誰かとまた来てみたいという感じを持つでしょうね。

井手 ありがとうございます(笑)。

二階 本当に評判もよろしいようですね。駅の将来像を示すお手本のようなものですね。

井手 お蔭様をもちまして平成九年九月の開業後一年間に、京都駅ビル内のデパートやホテル等をご利用頂いた方の合計は延べ三五〇〇万人にもなりました。ちょうど東京ディズニーランドの倍くらいの人数の方に来て頂いたことになるのです。また、京都駅の近距離切符の発券枚数は改築前より約四五%増えました。一日当たりの収入は約六三〇〇万円から約七八00万円となり、およそ二割増です。京都駅の収入はうちの米子支社と福知山支社の合計収入と同じレベルなんです。

二階 はあ、二つの支社と同じですか。

井手 米子や福知山支社の収入が二割も増加することは現実的ではありません。ところがあの京都駅ビルができたことによって、京都駅の収入は二割も増えたのです。観光の拠点という機能を含め、地域に貢献するために熟慮してその地域にふさわしいものを造れば、お客様は来てくださるんだということがよく分かりました。

二階 ですから第二、第三の京都駅のようなものをJR各社で、どんどん造って頂く。また、そうするために政府の方でどのようなバックアップができるか。地域と国と地方と、そしてJRと、一体になって開発に取り組んでいかなければなりませんね。

井手 その際、先ほど申しましたように、ナンバーワンを競うのではなくてオンリーワンでいきたいですね。同じようなものをあちこちに造っても駄目なんです。今、二階先生がおっしゃったように変えていくとすれば、それぞれのところでそれぞれの地域らしい独自のものを考えなければいけませんね。二階先生が設置にご尽力くださった、きのくに線の広川ビーチ駅はいいですね。

二階 お蔭様で天皇皇后両陛下の行幸の際、あの駅からお召列車にお乗り頂きまして、駅の格も大変上がりました。

井手 北陸本線の美川駅も、今大変人気が高いですね。

二階 あれは、亡くなられた奥田元運輸大臣が大臣就任三日目くらいに「ちょっと来い」と言われるんで伺いましたら、メモを持っておられましてね、「これは自分の生れ故郷の町だけど、大臣になったからといって自分で駅を直すわけにもいかをいから、君に頼むよ」(笑)とおっしゃられて、あの当時井手会長にずいぶんとご協力頂きました。

井手 あの駅にはミ二水族館ができたようですね。

二階 ええ。オープンには行けませんでしたが、この間、これもご縁ですけど、奥田先生のお葬式の後に、美川の竹内町長さんの案内で行ってまいりました。

井手 そうですか。ありがとうございます。

二階 地元の皆さんが喜んでくださって。あの地方のシンボルとなっているんですね。

井出 はい。あの駅前もお蔭様で綺麗になりました。

二階 井手会長は大阪へのオリンピック誘致もずいぶんお力を注いでおられるんですが、開西はもちろん、日本全体もこれには大きな期待を寄せています。

井手 これには力を入れてやりたいと思っているんです。もっとも、世界中他にもいろいろ有力な候補地がたくさんありますので誘致活動は大変と思いますが、今問題となっているような誘致疑惑が起きることのないよう、フェアにやっていきたいと思います。しかし、以前、「関西空港」開港の折、関西ってどこ?ということを世界中の方に言われるほど、大阪や関西の知名度は世界的にはあまり高くありませんでした。そこで、私個人の考えとしては、オリンピック誘致運動を活用して、大阪や関西の土地柄を正々堂々と世界に周知させるのだという視点から進めてはどうかと思っています。誘致のために公費を使うことも許されるわけですから、こんないいチャンスはないんじゃないかと思うんです。

二階 まさにこのオリンピックに立侯補するのを契機に、関西や大阪が国際的に認められ、評価を得られるようにしたいものですね。

井手 そえ、そうです。もちろんオリンピックが大阪に来れば、オリンピック開催の期間中には大勢のお客様がお見えになるでしょう。しかし、単にそれだけで終わったのではもったいない。大阪や関西に大勢のお客様が将来にわたって来て下さるような宣伝を徹底的にしましょうと言っているんです。そうすれば、仮に他の都市に決まったとしても、関西や大阪をアピールできたんだから良かったと思えるし、それによって関西や大阪に関心を持って頂いた方々が長期にわたって来て下さることになるかもしれないですからね。もちろん、オリンピック誘致をメインに据えますけれども、それよりも大事なことは、このチャンスに関西、しかも大阪、和歌山、奈良、京都、徳島、兵庫にまたがる大阪ベイエリア全体を関西として売り込んで、世界に知らしめること、そちらの方に力を入れてはどうかと思っているんです。

二階 関西のまさに国際化ですね。大阪ベイエリア全体で、人口は約2020万人、経済力はエリアの合計が約78兆円くらいですね。人口は世界的には47位で、イラク、マレーシアに匹敵しますが、経済力は世界で10位で、カナダ、ブラジルに肩を並べるくらいです。大阪ベイエリアが一体になれば大きな国のような実力を持っているということを確認しあって、船出をすることが大事だと思っています。

井手 そうなんですよ。世界第10位にふさわしく、大いに勇気を出して国際社会へ踏み出すことですね。

二階 立候補することによって、街も綺麗にしよぅと。そうすると皆さんそれぞれの目標を立てて頑張りますし。今スポーツに親しんでいる人たちにも、ひょっとしたらオリンピックに出られるかも知れないという希望が湧いてきますからね。オリンピックのスタジアムで観戦するだけでも、大きな感動というか、人生の中の印象深い1ページとなりますからね。

井手 その通りです。私は大阪府体育協会の会長を今兼ねておりましてね。

二階 あ、そうでしたか。責任重大ですね。

井手 さらに精進いたしますので(笑)。

二階 いやあ、それは大いに頑張って下さい。オリンピックはやはり国を挙げて対応していかなければいけないと思っているんです。

井手 ぜひ、よろしくお願いします。

二階 この間も、川崎運輸大臣(当時)とお話していたときに、2002年にワールドカップ、2005年は愛知万博、2008年は大阪のオリンピックなど、二、三年おきに大きなイベントがずっと並ぶ。これを繋ぎ合わせると画期的な観光の世界的な一大イベントになるだろうという話になりましてね。

井手 おっしゃる通りです。オリンピックの次は再び万博というようにシリーズでいろいろなことをやって頂いて、お客様の目がいつも関西に向けて輝くようにしたいと思いますね。

二階 うまくやれば、関西の夜明けが来るような気がしますね。

井手 私たちの京郡駅ビルも、年間380回ほどイベントを開催しています。あちこちの場所でやってますから飽きないんですね。お蔭様で成功しています。何時行ってもただで何かを見ることができるとか、何かショーをやっているとか。こういうことが集客に繋がるんだと思いますね。日本の国も二年に一回くらいずつ世界的な楽しいことがあるといいですね。

二階 素晴らしい発想で京都駅を成功させておられるようですが、今おっしゃるように、飽きないようずっとイベントを重ねていくということが大事なんでしょうね。

井手 そうですね。今、二階先生の地元の和歌山県で南紀熊野体験博覧会が開かれていますが、私は、非常に期待していると同時に、大変興味があるんですよ。普通、博覧会の会場に入るためには入場券が必要であって、その前売り状況によりお見えになるお客様の数をおおよそ予測できるんですよね。私たちの会社も熊野博をメインに様々な事業展開を企画していますが、今度の場合は、事前に切符を売るわけではありませんので、あらかじめお客様の数をカウントできないんですね。大きな博覧会としては初めてのことですから、これはいい経験になると思いますね。

二階 熊野博は県を挙げて、成功できるよう頑張っておりますよ。私も郷里に帰った時に、それぞれの熊野博というものを一人一人が描いて、友だちを招いた時にどこに案内するのかを考えておくことが大事だと言っているんですよ。時々、タクシーの運転手さんにも聞くんです。「お客様が熊野博に行ってくれと言われたらどこへ連れて行くんですか」と。やっぱり勉強しなければいけないんですよ。歴史やその地域のことについて説明されると、そのタクシーにもリピーターといいますか、ファンができて、お客様が来るわけですから。以前に観光立県推進会議で北海道の網走に行きましたら、駅を降りたら私どものために、ずらっとタクシーを用意して下さっているんです。「黒い公用車を並べることはできるんですが、この地域のことなら何でも知っている運転手さんを選んで、今日はお願いしております。何でもお開き下さい」とこう言われるんですね。で、ずいぶん楽しい思いをさせて頂きました。お話しなさる運転手さんも元気一杯、今まで自分が蓄積してきた地域のことすべてを我々に説明して愉しませてくれる。こういうことも大事だなと思っていましたので、この問から何人かのタクシーの運転手さんに「みんな自分の得意の熊野博を持って、そこへお客様をご案内して下さい。海へ行くか山へ行くかというだけではなくて、もう一歩突っ込んだ何かがあったほうがいいですよ」と言っているんですよ。

井手 素晴らしいことですね。それができませんと観光立県にならないですね。

二階 そういうことですね。

井手 観光大学設置や動く観光図書館の構想もございますけれども、観光そのものが日本の一つの大きな産業だという視点を大切にしつつ、様々な角度から観光振興をして項きたいと思います。

国鉄改革に高い評価
国民全体にも大きな自信を与える

二階 新幹線700系のデビューが大変注目を浴びていますね。
井手 私たちは500系を開発しまして、今度JR東海さんと共同で700系を製作しました。700系の評判はある程度いいので大変良かったと思います。700系のデビューにより新型新幹線の開発が、とりあえず一段落しましたので、次はハード面よりもソフト面を大切にサービスを良くいたしまして、できるだけ皆さんに可愛がられ、喜んでご利用頂けるようにしたいと思っています。今、中国や台湾で新幹線の建設が現実的になりつつあり、輸出の可能性も広がっているんですよ。

二階 井手会長は大学を出られていきなり国鉄へお入りになり、随分キャリアを積まれておられますが、国鉄時代、改革の時期、JRになってからと、思い出はたくさんあろうかと思いますが、特に印象に残っておられることをお聞かせ下さい。

井手 私が国鉄に入った理由は、小さい頃からの乗り物への憧れもあったと思うんです。しかし、本当は、ちょうど昭和三十四、三十五年頃は就職難で、当時の国鉄では大学卒業者の採用者数が、事務系全部で30人でしたが、そこへ1000人くらいの応募があったと聞いて、私はどうもそうなると挑戦してみたくなるという…(笑)。ですから、特に強い思いがあって、国鉄でなければならないという気持ちで入ったわけではないのですが、もう一遍就職するならば、あの国鉄に入ってみたいと思いますね。

二階 もう一回人生あればね(笑)。

井手 はい。それはなぜかと言いますと、国鉄というのは、末期は違いましたけれど、私が入社した頃は、我々キャリア組に対しては、責任を持つなら自由に経営問題等について発言してよろしいという、極めて風通しのよい組織だったからなんです。ああいう格好に最後はなりましたけれど、それでも最後の段階でも、私たち若い連中の言うことが結果的に通ってきたというのは、やはりそういう風土があったからだと思うんですね。もちろん、面白おかしく書かれている部分もありますし、ちょっと辛い部分もありましたけれども、最終的には、自分たちが思い描いたことが実現できた組織だったと思います。貧乏な組織でしたけれども、もう一遍入ったら面白いかもしれないなと思うぐらいの組織ですね。

二階 今日見事にJRとして、西日本も東海も東日本もそれぞれ大成功されているわけですけれど、やっぱり国民全体に、改革とか経営方針を刷新することによって、こんなにも大きく変わるんだということを実証された。国民全体にも大きな自信を与えて下さいました。

井手 経済戦略会議の委員を委嘱された理由も、多分、国鉄改革の経験を少し語れということだったと思うんですね。ですからいろいろな場面で話しましたけれども、国鉄改革が成功したかどうかは、まだ我々が判断すべきではありません。ただ、各方面からかなり高い評価を頂いていることはありがたいですね。考えてみますと、今から一五年、二五年前は、雑誌に「国賊」と書かれたんですよね、国鉄は。国賊の一員が国を救う会議のメンバーになるなんていうのは、ちょっと逆転ですよね(笑)。国鉄の改革は、もちろん国会等のお力添えがあってできたわけですけれども、やはり大きなことだったなと、そしてそれを中途半端なまま終わらせてはいけないと、国鉄改革の当事者として経済戦略会議に出て改めて思いましたね。

二階 JR貨物の会長の橋元さんが国鉄の副総裁をされておられた頃に、「この先、国鉄はどうなっていくんだろうか」と話しあったことがあるんです。私は選挙区でのいくつかの会合の日程を時問通りにピシッとこなしていけると「今日は汽車みたいだな」って言うんだと・・・(笑)。「この信頼、信用というのはすごい、これは何事にも替え難い」と話したんですよ。そうしたら橋元さんが、「それじゃ、他の場でその話を言っていいか」と言われるんで、「いやあ、それは皆が思ってますよ」と答えたんですがね。国鉄に対する国民の持つ信頼感は絶大でしたよ。

井手 そうなんです。大事なことですね。

二階 私が小さい頃、疎開しておりましたのが、紀勢本線の稲原という駅の近くでした。特急列事が通過するんですが、小学校一年生でしたからよく見に行きましてね。それでそうこうしているうちに駅長さんがたまに帽子を貸してくれたりしてね。僕も大きくなったら駅長になろうと思ったんだけどね、とうとうなりそびれちゃった(芙)。

井手 いや、二階先生は国家のもっと大事な職責を果たされておられるわけで、私どもは常々本当にありがたく思っております。

二階 駅とか汽車とかに対して、みんな共通の郷愁がありますね。石炭を焚いて走るSLは今も人気が高いですね。

井手 ひと頃は、汚れるし目にススが入るような汽車は嫌だって言われて、一度は全廃しましたが、今また、あっちこっちで復活しているようです。

二階 しょっちゅうテレビでもやっていますね。SLが走るとみんな、大喜びされていますよね。

それぞれの分野のいろんな知恵を出し合って

二階 私たち、全国旅行業協会5800社、みんな力を寄せ合って頑張っております。このメンバーに、旅行業の最先端にいらっしゃる井手会長に大御所の立場から、ヒントと言いますか、元気がつくことを何か一つ教えて頂けますか。

井手 くどいようですが、私は、21世紀に日本の国の基盤となる産業の一つは観光、しかも集客観光業だと思います。今は大変苦しい立場にありますけれども、未来は明るいと思います。ただ先ほども申しましたが、今までのように横並びや、他のモノ真似ではなくて、各々が「オンリーワン」を目指して取り組んで頂ければ、必ずや道は開け、21世紀には大産業としての飛躍があると思います。皆様にはいろいろなアイデアを出してやって頂きたいと期待しています。また、過去にはキャリア業の方がどちらかというと強いような風潮がありましたけれども、それもおかしいことです。交通機関、宿泊機関、あるいはお土産屋さん、社寺仏閣などの皆さんが一緒になって、それぞれの分野のいろいろな知恵を出しあって、トータルとしての「集客観光」を作りあげなければいけないと思います。その昔、国の役所として鉄道省があった頃のような、「鉄道の方は床の間に座って」という風潮から脱皮しなければいけないと思っておりますので、ぜひ忌悍のないご意見を私たちの方にもお寄せ下さい。

二階 私どもの協会の会員は、まだまだ中小零細企業ですが、これから旅行企画において、共同で企画させて頂くということをお願いしたいと思います。

井手 こちらこそ、ぜひお願いいたします。

二階 全旅協の会員のお得意様は皆さん顔と顔とで繋がっているんです。

井手 そうです。それが強いんです。

二階 ですから、私はこの不況の時に、むしろ強い業界だと言っているんです。大きいところは大勢の人を抱えて、借金を抱えてやっているんですが、私どもの方は一会員の社員の数がそんなに多いわけではありませんから、今は我慢をしながら、まさに春が来るのを皆で待とうということを言っているんです。このところ旅行観光開係が少し動きだしたという明るい感じが出てきたようですね。

井手 もう春は近いです。国内旅行については、JR旅客六社のゴールデンウィーク期間中における指定席予約数が、(平成十一年)四月十五日現在、前年比8%増の214万席で、今年は曜日配列が良かったこともありますが、三年ぶりに前年を上回りました。海外旅行については、特にアジア方面の伸びが大きく、全体でも前年比プラスで推移しています。

二階 これからも、景気の先頭ランナーとしてこの調子で行くといいんですがね。それから、この頃、盛んにあちこちから「花いっぱい運動」についていろいろな企画が盛り上がってきているんですが、これの全国ネットワークをつくっていこうということで「花を愛するネットワーク21」というものの準備が今始まっているんです。今度、井手会長にもぜひお力を頂きたいと思っていますのでよろしくお願いいたします。

井手 わかりました。花と観光は関係も深いわけですから、駅のホームも綺麗にしたいし、ぜひお手伝いさせて頂きたいと思います。

二階 本日は、お忙しいところをありがとうございました。

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