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「観光立国宣言シリーズ」

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航空自由化時代に一層の飛躍を

全日本空輪(株)社長 野村 吉三郎

航空規制の緩和で大競争時代が始まった。運賃値下げで需要は増えても収益は低下。各社は経営の合理化を推進中である。「競争と強調」が合言葉の業界と観光について、全日本空輸の野村社長にお話を聞く。(平成12年1月対談)

のむら きちさぶろう

昭和34年全日本空輸に入社。人事部長、東京空港支店長、東京支店長などを経て、現在全日本空輸社長。

 

二階 先日は沖縄百人委員会にご出席頂きありがとうございました。航空会社の社長自らが出て頂くと地元の皆さんの意気込みも違ってくるとのことですよ。

野村 それは、運輸大臣ご自身が出席され、冒頭のご挨拶だけではなく、パネルディスカッションから懇親パーティの終了までおつき合い頂いたからで、地元の皆さんも運輸省の観光振興にかける意気込みを実感され、感動されていました。

二階 私はこの百人委員会において、広域連携による観光振興を実践していく上で、まず都道府県の壁を乗り超えて、観光客の皆さんが期待している観光とは何かを皆で考えて頂きたいと願っています。

野村 大臣の構想の通り、各地域の指導者の皆さんも、私たち観光関連業界の皆さんも同じ方向を目指して大いに汗を流そうと思っています。大臣が提唱された「観光産業振興フォーラム」の構想を通じ、長年全国旅行業協会会長をされて業界の実情に精通しておられる立場から、また今回は観光行政の最高責任者としての立場から、すべての観光産業に対し、「団結して頑張れ!」との強いメッセージを贈って頂きました。大臣は常々「21世紀には観光は日本の基幹産業になる」と言われておられましたが、まさに新しい「観光産業振興フォーラム」の結成によって、観光が基幹産業となる道が必ず開かれるものと自信を深めた次第で、タイムリーであったとも思っています。

二階 観光産業は裾野がうんと広いわけですが、業種もたくさんあって、これが団結してしかもタテヨコに連携すればもっと大きな力になれる。お互いに何をなさなければならないのかを考え、観光の新世紀を自らの力で拓いていくことが大切です。しかし大きな力を持っている割には外に向かっては正直、案外声が大きくない。観光振興のため、官民協同で取り組まなければならないことが、国際的にも国内的にも山積しています。このことにチャレンジすることがまさに観光産業振興につながるものと思っています。

野村 その通りだと思います。「観光産業振興フオーラム」と地域に根差した「観光を考える百人委員会」が車の両輪のようになって動き出すと、我が国の観光が「離陸」してゆきます。

二階 そうあってほしいと願っています。

空の自由化がスタート
航空業界は大競争時代に突入

二階 さていよいよ二月一日から空の自由化がスタートしましたね。いかがですか。

野村 ご承知の通り、国内航空の需給調整規制が廃止され、路線設定と運賃設定は原則自由になったわけです。運賃は届出制になり、事実上自由になりました。

二階 運賃サービス、アイデアの競争が始まりましたね。航空会社は自己責任の原則に従って事業運営の一層の活性化、効率化を進め、利用者の期待に応えて頂きたいと思っています。

野村 日本の航空業界もいよいよ大競争の時代を迎えました。昨年の末にお客様にアンケートでご意見を伺いましたら、一万七〇〇〇名からのご要望が寄せられました。ご要望にお応えして往復運賃の復活、一万円均一のバーゲン型運賃等、新しい試みを打ち出しました。インターネットでの情報公開の充実にも努めています。

二階 スカイマークやエア・ドウなどの新規参入による競争が、航空全体の旅客数の伸びとなって効果が出ましたね。

野村 航空だけは不況の中でも伸びていますが、運賃競争の結果です。航空会社から見ますと収入単価が落ちて実際は苦しい状況になっています。旅客のキロ当たりの運賃収人をイールドと呼んでいますが、私どもも含めて国内線のイールドは平成五年からの五年問で二割近く下がっています。しかし旅客数が伸びていることは潜在需要がまだまだ見込まれるということですから、十分にビジネスチャンスがあると考えています。

二階 旅行業界との連携もずいぶん力を入れておられるようですね。

野村 航空輸送、キャリアの仕事は宿泊とかレジャー、当然その地の歴史や文化、さらにテーマパーク等、いろいろな要素がセットになって「旅」を形成するわけで、航空業界と旅行業界が手を携えていくことがとても重要なことだと思っています。

二階 景気もようやくやや明るさを取り戻しつつありますし、祝日三連休などを見ておりますと、国民の皆さんの旅行需要は極めて旺盛ですからぜひ頑張って頂きたいと思います。このことはJALやJAS等ほかの航空会社にもぜひお願いしたいし、もちろん新規参入のスカイマークやエア・ドウにも頑張って頂きたいと思っています。ただこの際、私の立場からお願いしておきたいことは、どんなに競争が激しくとも、安仝の確保が最も重要であることを常に確認して頂きたい。そして採算性の悪い地方路線の切り捨てを懸念する声を耳にしますが、この点もしっかり頼んでおきたいと思います。

野村 安全の確保は私どもの会社の命でもあります。大臣がご就任後、記者会見の際の第一声で安全問題に言及されたことを印象深く記憶しております。地方の路線についても使命感を持って努力してまいりたいと考えています。

二階 今年度から地方空港の空港使用料についても、国の管理している空港は原則三分の二に引き下げを、地方自治体管理の空港についても引き下げを行なう等、仝国のネットワークの維持、形成のための努力をしておりますし、離島航空路線については運航費補助制度の創設や航空機燃料税の軽減など、まだまだ十分ではありませんが、生活路線の維持に政府としても配慮してまいりました。一層の経営の効率化を図り、路線の維持、拡充についてこの機会に頼んでおきたいと思います。

野村 空港使用料の引き下げの大英断は運輪省に感謝しています。経営の効率化については経営再建計画を策定し、二〇〇二年までに安定配当が可能な経営体質になるよう頑張っています。有利子負債の庄縮、グループのホテル事業の改革等、不退転の決意で取り組んでおります。当然、収益性を重視せざるを得ませんが、国内線のうち関空を中心とする地方路線については、需要に合った機材を使用するべくエアーニッポン(ANK)に順次移管を進めております。

二階 競争の促進は航空市場をより活性化する上で重要です。ただし、行き過ぎや過度の競争は、結局は利用者の利便を損なうという結果になりかねません。競争と協調、難しいことですがベストエアラインとしてぜひ頑張って下さい。

野村 お蔭さまで四年連続ベストエアラインに選ばれました。一層気を引き締め、その名に恥じないよう努めたいと思います。今日の航空事業、大変厳しいことに違いありませんが、私はチャンスと判断しています。

二階 先の二つの祝日三連休効果がありましたし、これだけ情報通信が便利になれば、テレビ電話等でビジネスも事が足りるかというとそうではなくて、フェイスツーフェイスの機会が一層増しているわけです。最近は修学旅行もほとんど飛行機を利用します。ソフトの面でもまだまだ工夫の余地はたくさんあるでしょうし、規制緩和でまさに航空業界は、おっしゃる通り「チャンス来る」ですよ。

野村 前向きに捉えて時代の変化を先読みしてやっていきたいと思います。競争と協調の両立は痛感しています。地方空港のハンドリングなど、空港によって他社と協業化を図るなどもその一例て、コストを引き下げることができます。公共交通機関としての使命を果たすため、可能な限り他社との協業化を積極的に進めたいと思っております。

二階「運賃は競争しますが、経営は協調します」というのは、素晴らしい事だと思います。各社の従業員、株主等のご意見を掘りおこせば、グッドアイデアがまだまだいくらでもありますよ。

野村 その通りだと思います。

空港等のインフラを充実させ
海外からの集客観光に力を

野村 ところで私たちだけではどうすることもできない問題もあります。羽田をはじめ、大都市圏の空港客量が不足しています。羽田の再拡張、首都圏の第三空港建設にもご努力を頂いていますが、一層積極的にお願いします。

二階 羽田は今後新B滑走路の使用開始にともない容量が拡大されても、21世紀の初頭、再び限界に達することは目に見えています。首都圏の空港客量が不足していることは明らかです。咋年の補正予算や、いま国会で審議をしております十二年度予算等において、新たな首都圏空港の調査に合計18億円の予算を計上し、事業化に向けてスピードを上げるつもりでおります。我が国は首都圏のほかにも近幾圏、中部圏と巨大な経済圏があります。いま新たに世界の五〇か国から、これらの地域に飛行機の乗り入れ希望が殺到しています。乗り入れ航空協定は外務省が交渉し、条約を結ぶことはご承知の通りですが、歴代外務大臣が国際会議等に出席された際、諸外国の外務大臣からいつもこの陳情があるそうで、この前も河野大臣から、「何とかなりませんかね」と言われております。

野村 力強いご決意を伺って安心しました。首都圏のみならず関空も中部も急ぎます。

二階 その通りです。関西空港は21世紀初頭に現在の一本の滑走路だけではパンクします。名古屋もそろそろ限界ですし、関空二期工事、中部国際空港の整備は全カを尽くします。野村航空会社からだけではなく、国民の皆様の願いでもありますから。五〇か国の皆さんが来られるということは文化や学術の振興に大きな活力を与えることになりますし、当然日本からもビジネスや観光はもちろんのこと、海外留学生もさらに増えるでしょうから、あらためて経済効果だけではなく、日本の交流にかかわる総合的な国費による効果を調査すれば国民の皆さんの理解も一層深まるでしょう。

二階 このところ野党から毎日公共事業がどうだ、というご意見が続いていますが、私たちのやっている空港や港湾、鉄道は急にやりたくても一年や二年でやれるものは何もない。「計画的に着実に、やがて完成の日、必ず国民の皆さんに喜んで頂ける。正しい評価を得られる日が必ず来る」と私は運輸省の皆さんにいつも言っております。

野村 国会の審議をテレビや新聞で拝見しておりましてもご苦労の多いことと思いますが、国益のためにぜひ頑張って下さい。

二階 やりますよ(笑)。この頃全日空に乗りますと、機内のアナウンスで「スターアライアンスメンバー全日空」とよく耳にします。共同運航についてお客様の理解も得られ、好評のようですね。

野村 スターアライアンスは世界120か国、766都市を結ぶグローバルネットワークで、一つの航空会社ではとても挑戦することのできない地球規摸でのサービスの提供が可能となります。航空業に携わる者として世界に雄飛されるビジネスマンをサポートし、サービスができることに感動しています。加盟している九社の航空会社にまたがるマイレージの特典も好評です。航空会社も各都市のチケットカウンターや空港ラウンジを共用することでコストを節約できます。

二階 まさに地域的な協調の効果ですね。期待していますよ。

野村 航空機を一機買うだけで百何十億円もの投資になり運賃を頂いてこれを返すのは考えただけで本当に気が遠くなる日もあります。お互いの持っている機材を活用しようという生活の知恵です。

二階 やがて物品の共同購入まで進んでいきますね。

野村 ぜひやりたいと思っております。相当の合理化ができます。その時はまたお客様にサービスします。

二階 先に言われてしまいましたが、航空会社とお客様と私たち運輸省がもっともっと知恵を出し合いたいですね。外国の航空会社から技術力も含め、彼らの合理性等を大いに学習することによって、我が国の航空業界全体の規範となるよう成果を挙げて下さい。

野村 全日空が生き残るための必須条件だと思っています。我が社の21世紀への飛躍の足がかりにしたいと思っています。

二階 話は変わりますが、外国人の訪日観光客はご承知のように、いま444万人になりました。外国に旅行に出る人は1600万人ですから、その差は大きいわけで、私は訪日観光客を800万人まで持っていきたいと対策を練っています。五〇か国の国が新たに日本への乗り入れを希望している。特に中国は団体観光客も訪日を希望している。いずれも運輸省が中心となって努力しなければなりませんが、スターアライアンスでもぜひご協力を願いたいと思っています。アジアに重点を置いていきたいと思っていますが、特に東南アジアからの訪日に何か方法はありませんかね。

野村 これには、できるだけ低額の航空運賃を設定することが、最も重要なことだと思います。アジアからお客さまを迎え入れるためには・・・。
このため、全日空グループの第二ブランドの航空会社で運航するようにして、少しでも運賃引き下げの努力をしたいと思います。

二階 よろしくお願いしておきます。ところで、運輸省に対し、何か特にご要望やご意見があればどうぞ…。

野村 二つあります。ひとつは東京−大阪(関空及び伊丹空港)の「シャトル便」です。もうひとつは「コードシェア」です。

二階 東京−大阪の「シャトル便」は東京−大阪をいつも往復している経済界の人たちから、以前から強いご要望を頂いておりました。したがって、私は就任後、早々に「シャトル便」の実現について可能性の検討を航空局に命じておりました。実現に向けて、問題点を整理して結論を出したいと思います。

野村 大変力強い大臣のご方針を伺って勇気が出てきたように感じます。

二階 また「コードシェア」てすが、全日空以外の会社でも進められているようですが、ソフト面の工夫の一つと言えるでしょう。我が国の主要空港の能力を多角的に活用することになりますね。このような動きをサポートするなど、利用者の利便の改善に運輸省としても知恵を出していきたいと思います。

野村 空港の客量に当面制約がある中で、航空会社でもお客様の選択肢が広がるように積極的に工夫をしたいと考えております。例えば、首都圏のお客様が成田からの便に加えて、羽田から関空で乗り継いで海外に向かうルートもより便利に使えるように、羽田と関空の間の弊社国内便に、提携している外国の航空会社の便名を付す。いわゆる「コードシェア」を行なうことを計画していますが、この計画が実現できれば、特に首都圏西部にお住まいのお客様にとっては海外へのアクセスが一層便利になるものと確信しております。

二階 野村社長さんと最初にお目にかかったのはいつ頃でしたか、とても印象深いお名前でびっくりしました。実は私の郷里のご出身で、日米開戦当時の駐米大使がやはり野村吉三郎という方で、元海軍提督でした。従って野村元駐米大使は和歌山県選出の参議院議員としてもご活躍されたわけですが、和歌山県民の先輩たちの間では誰でも知っている名前ですよ。その人と同姓同名ですからすぐ覚えましたよ(笑)。

野村 そうらしいですね。私はそんな立派な方に及びませんが、和歌山県へご挨拶にまいりますと、私が差し上げた名刺を見て皆さんそのことをおっしゃいます。

二階 そうですか(笑)。和歌山の人はみんな珍しがっていますが、古い人達は野村大使のことを今でも誇りに思っています。

野村 私は似ても似つきませんが、言われる度に光栄だなあと親に感謝しています。

二階 今年の一月のはじめに野村社長には、日本航空の兼子社長、日本エアシステムの舩曳社長等とご一緒に中国を訪問して頂きました。これには中国側もびっくりされたようです。日本の代表的な航空三社の社長が揃って北京に来られたことによって、あらためてミッションの評価が高くなりました。

野村 私たちのほうこそ評価が高くなりました。皆さんも今後日中友好にさらに力を尽くしたいと考えておられる方々と共に、私も全力を挙げて頑張ってまいりたいと思います。

二階 日中友好記念行事−−「日中文化観光交流使節団2000」を計画しましたが、日本の航空業界もご協力下さい。

野村 当然です。航空3社の社長が出来る限りのご協力を約束しています。

二階 ありがとうごさいます。今日は長時間、貴重なお話を伺い、私も大変参考になりました。

野村 こちらこそ、超ご多忙の中、大臣の観光振興に関する情熱の程がひしひしと伝わる思いがいたしました。ありがとうございました。

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