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「観光立国宣言シリーズ」

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アジアとシルバー世代が
 これからのキーワード

鞄本エアシステム社長 舩曳 寛眞

長く無風であった我が国の航空業界にも、新規参入による競争激化の波が押し寄せている。国内各地に多くの路線を持ち、中国の昆明、西安へも路線を拡大した日本エアシステム(JAS)の舩曳社長に、21世紀に向けた観光産業の展望と抱負を語って項く。(平成11年5月対談)

ふなびき ひろみ

昭和32年東京急行電鉄に入社。昭和46年東亜国内航空へ企画室次長として出向。昭和63年日本エアシステムに社名変更、平成7年社長に就任。現在に至る。

二階 本日はお忙しいところありがとうございます。今度、JASでは、関西空港から中国の昆明へ、成田空港から広州、西安へ直行便をお入れになられたのですね。

舩曳 関空から西安へも4月26日(平成11年)から乗り入れております。

二階 中国に村して相当力を入れておられるようですが、私たちの協会でも、先に昆明の世界園芸博覧会の内覧全に68名の会員が参加させて頂きました。大変好評で、中国との観光交流もこれで拍車がかかると思うのですが、ちょうどそんなときに、日本エアシステムが先見の明を持って、昆明との間に直行便を開かれたということで、拍手を贈っておりますり。舩曳社長も行ってこられたそうですね。

舩曳 はい。私も二回行ってまいりました。あそこはおよそ1900メートルの高地にある都市ですので、「昆明」というと皆さん寒い所と思われるようですが、四季春のごとしと言われているように、一年中花が咲き乱れておりまして・・・。

二階 園芸博にはもってこいの場所ですね。

舩曳 そうですね。私たちも最初の計画では、関空―昆明の直航便は春から秋まで運航して冬はお休みにしようかと思っていたのですが、何とか通年でできないかと今検討しております。

二階 ホテルなども園芸博の関係でずいぶん増えたようですね。

舩曳 はい。私が初めて行ったのは平成8年でしたが、そのころに比べると大変な変わりようです。ホテルができていること、それから鉄道が昆明から大理まで、花博に合わせて開通するようなことを言っていましたし、一月には高速道路が大理から麗江まで通じました。そういうインフラの整備も急速に進んでいますし、昆明は自然あり、気候温暖、少数民族がいて、古い農業のルーツとも言われるものがありますので、将来、観光地としての人気が高まると思っています。

二階 歴史がありますからね。しかし、写真やプロモーションビデオなどで拝見しますと、街が整然としてずいぶん都市化しているようですね。

舩曳 この3年間だけでも近代化はとても進んだように思います。道路も整備されてきましたし、車も増えました。

二階 観光地のトイレもかなり力を入れたと言われていますが。

舩曳 そうですね。中国というと、すぐ「トイレが汚いだろう」と言われるんですが、そういう先入観もばつぼつ取り払わないと、相手の国に対して失礼かも知れません。

二階 この間お合いになったかもしれませんが、何光?さんという中国国家旅游局の局長がお見えになりまして、川崎運輸大臣(当時)、三塚元運輸大臣、自民党の古賀国対委員長(元運輸大臣)とともに、私も全国旅行業協会の会長としてお目にかかったのですが、中国の日本に対する観光客誘致は大変に熱心ですね。

経済格差の縮小を日指し
内陸部の観光振興に中国政府も本腰

舩曳 私どもがなぜ内陸部に路線を入れたかと言いますと、中国北京航空局の方や政府の要人にお合いしたときに、中国の21世紀の最大の課題は、沿岸・内陸の経済格差の縮小だとおっしゃるんです。日本から直航便が来るなら、日本航空や全日空が大連、上海、青島などの沿岸部には十分路線を張っているので、できたらJASは内陸に張ってくれと。中国の経済政策にもマッチしてるし、観光振興の面でも中国政府もこれから力を入れるので、内陸沿岸の経済格差解消のためにぜひ乗り入れて欲しいと。その場合には全面的に協力するという話も頂きましてね。それで三年がかりで準備をして、政府にもお願いしました。

二階 今、日本人が中国へ渡航するのは年問150万人くらい、中国から日本へはまだ20万人くらいでしょうか。

舩曳 今日調べてきましたが、平成九年度で日本人が104万人くらい中国に行っていて、向こうから入ってくるのが28万人。ですからそんなものでしょう。

二階 せめて日本人の中国への渡航者数の半分くらいは来てもらいたいというのが、日本の観光業界の希望のようですね。JATA(日本旅行業協会)の松橋会長も挨拶で述べておられました。ぜひ将来はそうなって欲しいものですね。

舩曳 最近聞きましたら、中国政府も日本を中国人の観光渡航先として指定したそうですね。あとは日本の入国ビザの問題。そういう関係が緩和されるか、あるいは中国政府とのそういう話し合いがつくかということに絞られてきているようですけど、いかがですか。

二階 何局長が先般お見えになった理由の一つは、99年昆明世界博覧会のPR。もう一つは今、舩曳社長がおっしゃった入国ビザの関係ですね。そういうことの諸手続が円滑に進むようにということで、日本の関係各省と直接お話し合いなさったようです。川崎運輸大臣(当時)も、これには大変積極的な姿勢を示されておりましたから、うまく進むのではないでしょうか。

舩曳 私のところは、昆明に先立ちまして、三年前に南の上海と言われている広州へ乗り入れているんですけれど、私どもが行きましたころは「マンゲンコ」という言葉があって、年収100万円ある農家を万元戸と言ったんですが、最近行ってみますと、万元戸の収入は1000万になったそうですよ。日本の受入条件が整えば、広州からももっと来日すると思います。広州周辺からタイ、シンガポールに出て行っているのがおよそ年間50万人。広州から日本にはほとんどまだ来ていないんですね。中国では、受入条件が整えば、広州から一番たくさん日本に観光客が行くだろうということを言っていましたが、ぜひそうなるといいと思います。

修学旅行で国際交流を
人的交流こそ相互の安全保障

二階 修学旅行もお互いに交流できるようになれば素晴らしいと思うんですがね。

舩曳 そうですね。私は、今度西安に乗り入れましたときに、向こうの省長に、「日本の各都道府県の教育委員会宛に招聘状を出して頂けませんか」とお願いしてきたんです。西安は日本の文化の源流と見られているわけだから、修学旅行地としては最適地です。今から一三〇〇年前は、半年くらいかかって日本の留学生が西安に行きました。我が社の飛行機ですと四時間で着くわけですから、「ぜひ、修学旅行の交流を深めるように努力して頂きたい」とお願いしましたら、近々省としての正式な招聘状というか勧誘状というか、そういうものを出すと言ってくれています。ぜひ、修学旅行の交流を進めたいですね。

二階 五〇〇〇年の歴史を誇るというトルコに行きまして、歴史や文化が刻み込まれているような感動的な建造物を拝見したときに、やっぱりこれを子供たちに、しかも感受性の強い、これからどんどん勉強していくような人たちに、こういうものを見るチャンスを与えたいなとつくづく思いました。トルコはちょっと遠いでサが、中国は近いですから修学旅行にいいですね。

舩曳 関空からですと、三時間ちょっとです。午前中に出て、昼には現地で活動できます。それから、私がお願いしたいのは、ただ物見遊山ではなくて、向こうの学生との交流。スポーツや音楽とかね。たまたま、九州の書道連盟の人が、この前、西安に行ってきたのですが、安倍仲麻呂記念館で書の競演をしましてね。お互いに見せあって、それを交換していましたけれども、書道交流などもいいんじゃないでしょうか。

二階 もう20年も前の話になりますが、私も韓国に高校のホッケーチームを連れて違征したことがあるんです。そのときに、韓国の子供たちと日本の子供たちとでは、言葉が通じないからどうすればいいかと思ったんですが、そりゃもう簡単ですね、同じ世代ってのは。すぐ背中合わせに背丈を比べ合っているんですよ。それから、白分の持っている小銭を交換したりして。そうこうしている間にもうすっかり仲良くなっていました。案ずるより生むが易しですね。やはり、若いときにそういう交流の糸口をつかんでおくと、その後もどんどん交流が深まっていきますからね。ぜひ、JASさんが今度の路線を開設したことによって、「修学旅行」に結びつくように、次の世代に結びつくようにお願いをしておきたいと思います。国会からも応援させて頂きます。

舩曳 今、二階先生が言葉のことをおっしゃいましたけれど、中国内陸部の人たちは、日本との観光物産の交流に大変熱心で、若い人がものすごく日本語を勉強しているんです。私は、日本も21世紀にはアジアから多くの人に来てもらわなければいけないのではないかと思います。そうすると、今まで日本の若い人はみんな英語を勉強していましたが、アジアからどんどん人に来てもらうためには、観光に携わる若い人に中国語をしっかり身につけてもらうことが重要になるでしょう。向こうの人は、一所懸命日本語を勉強して我々に来てもらおうと努力しているわけですから。日本に英語のガイドはたくさんいますが、これからは観光業界が中国語を話せるガイドを養成していくということも、国際観光の受入側として大切なことだと思います。

二階 観光は本当にアジアに目を向けなければいけないんですよね。九州や沖縄には台湾の人が大勢来ていますよね。

舩曳 そうなんです。韓国及び台湾は日本人が行く数と向こうから来る数が拮抗していますけど、中国の場合を見てますと、日本からの100万人に対して向こうからはわずか二〇万人程度。人口の比率等からみれば、年間100万、200万中国の人が来る時代というのはそんなに遠くないんじゃないですか。そういう点からみても、中国語ガイドの養成は、日本の観光業界が早急に力を入れなければいけない重要事項だと思います。

二階 考えなければいけないでしょうね。このごろ地方の空港で、韓国語などで案内を書いてありますね。今後は、中国語でも書いておくことが大事なことなんでしょうね。

舩曳 それからもう一つ、若い人との交流について申しますと、今度、西安と昆明に乗り入れるにあたりまして、向こうの少数民族の女性たちに宣伝のために来てもらったんですが、その人に日本の感想を開きましたら、「日本人は非常に親切だと感じた」と言われました。今まで中国あるいはアジアの人は、日本に対して戦争中のいろんな悪いイメージを持っているんですね。ところが、実際に日本に来てみると、自分たちが思っていたより日本人はすごく親切だと言うわけです。ですから、観光で、あるいは修学旅行で、アジアとの交流を深めていくことは、歴史教育で教わった彼らの日本に対する認識を正してもらうことにも繋がるんですね。その意味からみても、観光の役割はものすごく大きいと思います。

二階 大きいですよね。ですから、観光交流によってお金を稼ぐという営業努力もさることながら、やはりそういう文化交流、人的交流によって、これから両国が仲良くやっていくために観光は大いに役立っている。私は、この人的交流の進展が何よりの相互の安全保障にもなっていくと思います。相互理解ということが、国と国との交流でも一番大事ですからね。子供のころから相互に相手を理解していく努力が必要なんですね。
ところで、近頃、航空会社の新規参入がいろいろ話題をまいておりますね。このことによって、競争が激しくなる、航空運賃も割引されるなど、いろいろ難しい問題もおありでしょうが、このことに関して忌憚のないところをお聞かせ下さい。

舩曳 運賃を半額にするということは、我々内部の原価計算からみれば非常に無理な話だという気持ちを、私は今でも持っています。しかし、時代の流れと言いますか、先ほどから先生がおっしゃっておられるように、今後、海外から多くの人に来てもらうためにも、やはり、日本国内の旅行費用をもっと下げていかなければいけない。そういう中で、あの会社が投じた一石は無視できないんじゃないかと考えています、従って、我々も負けないように、よりコストの低い運賃輸送ができる能力を身につけていかなければいけないと思っております。
先生に一つ、この際、お願いしたいことがあります。と申しますのは、私どもが去年の旅客運賃収入に占めている空港使用料と燃料税とを合わせた公租公課は700億円になりました。収入の約25%です。遅れている空港整備に、この財源が今まで非常に大きな役割を果たしてきたということは否めない事実だと思うんですけれど、今の旅行業界の置かれている立場、それから利用者の方々のもっと安く旅行したいというニーズも非常に強まってきていることなどありますので、やはり、これからは空港をつくることも大切ですけれども、同時にお客様を安く運ぶというために、ぜひ、この公租公課制度のあり方を政治の場でご検討頂くことをお願いいたします。

二階 そうですね。少し引き下げをやったようですが、もっと思いきったことをやらなければいけないという感は、我々も以前から深く持っています。それから、空港ごとに使用料も違うからやりにくいこともあるでしょうが、2万円の運賃ならば、その中に空港使用料等、いくら払っているということを乗客にも認識してもらったほうがいいのではないかと思いますね。

舩曳 そうですね。これは、航空協会の中でもぜひ取り上げてみたいと思います。情報公開も大事ですから、お客様に払って頂いている運賃のうち、これだけが空港整備にお役に立っていますということをお知らせせすれば、もっと理解してもらえるかもしれませんね。

二階 ええ、知らせたほうが乗客の皆さんもなるほどと感じて、自分たちも貢献しているんだという気持ちにもなるのではないでしょうか。しかし、運賃が安いことも便利なことも大事ですけれど、やはり飛行機の場合は、安全の確保が何より大事ですからね。低運賃等の競争激化だけでなく、安全性の確保についても各社が競争して万全を期する、そういう配慮を、それこそ官民挙げてやっていかなければいけないことだと私は思いますね。

舩曳 ええ、安全運航は何と言いましても、原点ですからね。

需要が高まるシルバー世代に合わせ
旅行内容と価格体系の見直しを

二階 このごろ、旅フェアとか、WAC21(広城連携観光振興会議)とか、旅行需要の喚起を盛んにやっております。航空業界からご覧になって旅行業界全体がこれから何をなすべきか、このへんを旅行業がもっとみんなで頑張ればいいのに、もしくはこのへんは航空業界とも一緒に頑張ろうじゃないかということがありましたら、どうそお願いいたします。

舩曳 今から10年ほど前は、旅行と言ったらヤングと言っていた時代がありましたけれど、21世紀は国内旅行で一番安定的需要で、しかも成長性があるのはヤングよりもむしろシルバー世代だと思います。

二階 そうでしょうね。お金と暇を持っておられるんですから。

舩曳 時間がありますでしょう。ですからあとは健康だけですよね。

二階 健康であれば奥さんと一緒に旅行したりね。このごろ、飛行機の中はもちろん、新幹線でもご夫婦でリタイアした後に旅行されている方に出くわすことがありますが、幸せそうでいいなと思いますね。

舩曳 シルバー世代は、なにも土曜・日曜・祭日でなくても旅行できるわけですから、そういう人たちが旅行しやすい施設や価格体系を旅行業界が考えてはどうかと思います。例えば、食事、日本旅館の懐石フルコース。歳をとるとそれほどの量はいらず、自分の食べたいものが少しあればいいわけです。その分値段が安くなって、何回も旅行できるほうがいいという時代ですから、旅行の内客から価格体系まで、シルバー世代に合わせて見直すことが必要なのではないでしょうか。

二階 この対談コーナーの中でも、JR東日本の松田社長はじめいろいろな方々が、やはり食事や宿泊は自由な選択ができるという配慮が必要ではないかと提案されています。私、この間、地元のあるホテルに行って感心したんですが、そこでは押し花の研修会を毎晩やっているんです。そうすると、それをご覧になったお客様が、翌日は野原で花を摘んできて参加なさり、立派な絵柄の作品を仕上げられ、得意げにお持ち帰りになるそうなんです。それがだんだんと伝えられて、押し花作りが目当てのお客様も増えてくる。押し花ということによって、そのホテルにまた新たな価値が生まれてくるんですね。
ですから、食事のこととか温泉だとか、あるいはスポーツを楽しむとか、ハイキングを組み入れるとか、まあいろいろなことを工夫して、今、舩曳社長がおっしゃったように、お年寄りが安心して喜んで旅ができるように考え、工夫することは重要なことですね。これは、旅行業界、観光業界でこれから収り組んでいかなければいけない宝の山みたいなものです。

舩曳 そういう点で、ちょうど今、ここてちょっと待っている間に、先生のご郷里の和歌山県が出している観光情報誌を見まして感心いたしました。私は前々から、シルバー世代は、もういろいろと若いうちに有名観光地は行き尽くしているのだから、むしろこれからは本当にひなびた田舎に心惹かれるのではないかと思っているんです。ですから、ローカルな観光行事暦的なものがあれば、地方の行事を自分たちでで探し出して訪ねてまわるというようなことも、お金がかからずできますし、また、今まで行ったことのない土地のいろいろな歴史だとか、人情に触れることもできますから、ぜひ、ローカルの観光行事暦が欲しいと思っていたんです。そうしたら、和歌山県にはちゃんとそれかできているんですね。

二階 私の郷里の方で、秋篠宮妃殿下(紀子様)の先祖の出身地でもあることで有名になった有田郡の清水町という所に、四〇〇年前からずっと伝承されている御田舞(おんだのまい)という踊りがありましてね。これは農業の収穣に対しての祈り、感謝、そんな気持ちを込めた踊りで、文化庁の無形文化財の指定を受けており、二年に一回行なわれるんです。私もできるだけ時間を都合して参加しているんですが、本当に多くの観光客に見てもらいたい、見せてあげたい、という気持ちがします。しかし、観光事業としてやっているわけではないですから、PRとかアピールする場所・場面には恵まれない。ですから、そんなに大勢の人が見に来るわけではないのですが、まあだんだんと観光客も増えてきています。田舎の魅力が見直される時代になってきたということですね。今度、農業基本法を37年ぶりに改定するんですけれども、私は、やかましく「地域の伝統文化、農業に対するお互いの感謝の気持ち、あるいは自然の恵みに対する祈りの気持ちをもっと大切にすることが、農業基本法の中の精神に脈々と伝えられていくようでなければいけない」と言いまして、そういうことをちりばめるようやってみました。これからお年寄りや、いろいろな素晴らしい観光地を歩き尽くした人が、改めてひなびた田舎の良さを求めて旅行するということも増えてくるでしょう。そこへ行くために時間がかかるのは大変ですから、拠点拠点に飛行機でぱっと飛んで、目的地でゆっくり過ごされるというコース・組み合わせを、これからJASさんと、私ども全国旅行業協会のメンバーとの間で共同企画、共同研修等、意見交換する場ができるといいと思いますね。

舩曳 私は、そういう隠れた、掘り起こせば魅力あるローカルの観光資源というのは、まだまだあると思うんです。各自治体も努力をなさって掘り起こされているんですが、ただ、それを都会の人間にどうやって知らせるかということが難しいんですね。情報伝達には非常にお金がかかりますでしょう。

観光業界全体が協力し
新システムでの観光情報の提供を

二階 全国に過疎町村というのは1400ぐらいあるんです。私は過疎村策ということに取り組んでおりまして、これからもこの仕事をずっとライフワークのように続けていかなければいけないと思っております。そこで、この過疎地城の良さを紹介するにはどうしたらよいか。野に咲く一輪の花にも露やしずくが滴るような地方の山の中の風景などは、見て頂ければなるほどと感心したり、感動を覚えたり、また、友達を連れて行きたいという気持ちにもなってくれるんですけれども、それを都合の人に最初に見せるにはどうすればいいかということが、一番の問題ですね。
私、運輸省や国土庁にお願いしてプロモーションビデオをいくつか作ってみたんです。でも、作ったビデオをどう都会の皆さんに見て頂くかということが難しいんですね。テレビ局とかが考えついてやったことなら、簡単にできるんですが、我々一般の者が、過疎地の良さを都会の人に伝える方法というのは大変困難ですね。だけど、一度その魅力に浸った人は、ずっと病み付きになって来られますよね。

舩曳 以前に、各自治体でお金を出し合って、インターネットのホームページのようなもの、年間の観光的なローカルニュースなどを見たい人は、自分で操作して情報を得ることができるような仕組みを考えられないものだろうかと、和歌山県の観光振興会議でもご提案申し上げたんです。
いろいろな観光連盟や観光課がよく大都会に宣伝隊を出して来られるんですけれど一過性ですからね。旅行したい人が、いつでも自分で情報を引っ張り出して見ることができるようにするために、各自治体はお金を出し合って、そのホームページを提供するという方法ですね。シルバーの人も会社を辞めた後は、パソコン操作を勉強する時間もできますからね。お金のかからない方法で、日常安価に皆さんに情報を提供するために、インターネット等の新しい情報通信システムを使うことはできないものかなと、こんなことを考えております。
全国旅行業協会さんもぜひ、このテーマを研究してみてください。航空会社も、各自治体も、あるいは地方のバス会社も、旅館も、みんな少しずつお金を出し合って、そういうものを維持していくというやり方を考えられないものだろうかと、思っているんですけれどね。

二階 大賛成ですね。私が、以前、北海道に出張したときに、あるホテルで、北海道のことを書いてあるいろいろな書物を陳列していたんです。時間が遅かったものですから、取り出して見ることはできなかったのですが、ここに三日から一週間も滞在すれば、観光や歴史など北海道のことはすべて勉強できると感じたんです。そこからヒントを得ましてね、私は観光図書館の設立を提唱しているんですよ。観光に関する本を借りることが出来るとか、そこへ行ってボタンを押せば、北海道の流氷の様子や一ヶ月先の昆明の花の公園の状況がちゃんと映像で出てくるとか。これを日本全国で最初は10ヶ所くらいつくれば、観光そのものが物見遊山だけでなく、文化の勉強になるということの表明にもなると思ってね、運輸省で少し検討してもらっているんです。
まあ、役所がどうこうするというのではなくて、今、舩曳社長ご提言のような形で、観光業界全体がそういう方向に立ち上がるようにならないとね。ですから、バスなどを利用してやったらいいんです。私は「動く観光図書館」と言っているんですがね。最初に見本を見せてこうだということでないと、なかなか皆さんが腰が上がらないんですけれど、やはりそういうところも開拓していくべきです。動く図書館ですと、学校にも回って行けますからね。

舩曳 その観光図書館というものは、ぜひ、実験的にも東京と大阪ぐらいでやってみたいものですね。これだけのマーケットですから。しかし、費用、採算性の問題もありますね。

二階 ですから、バス会社からバスを提供してもらい、本や映像などは航空会社にお願いするとかいうことで、みんなで協力すればこんなもの簡単にできるんですよ。そこに、若者のニーズなどを随所に取り入れていけば、新しい形の観光産業の展望が開けると思います。何もそれだけでなくて、それならこういうことがいいとか、また別の提案を出して頂いたりしてね。それによって、もっと観光業界がエキサイトして活況づいてくるんじゃないかと思っているんです。

舩曳 とりあえず既存の区営市営の図書館から実験的に始めてみたらいかがでしょうか。あるお客様が、屋久島に縄文杉を見に行かれたときに、町常の屋久島記念館の専門研究員が案内をして下さった。これからの観光客というのは、ただ見るだけでなく、専門的なある程度の知識を得たいという気持ちがありますね。

二階 そうなんです。だから説明員にはしっかり知識を持っている人が欲しいんですね。リタイアされた学校の先生などが、一所懸命になって説明されているのに時々観光地で出くわすことがありますが、観光客から感謝されているようですね。

舩曳 私も熊野古道に行きましたときに、ボランティアで熊野古道の解説をして下さった方は中学校教師をリタイアされた方で、やはり非常に好評でしたね。これからは施設、ハード面の整備とは別に、今言われた観光図書館の設立や専門説明員の育成、さらにアジアからの観光客に対する中国語や韓国語がきちんと通じるような受入れ体制を整えていくということも、観光振興には大事かも知れませんね。

二階 ただ、ディズニーランドへ行くのと同じような観光ではなくて、もう少し自然とか、歴史とか、その風土、よって来たるところの深みを味わって頂くということが、これからの観光には大事なのでしょうね。私はいつもJASさんの飛行機に乗せて頂いて地元へ帰るんですが、社内報を拝見しておりますと、社長のグッド・スピード・オルウェイズ(Good Speed Always)のご挨拶が載っていて、感心しているんです。社内報というのもいろいろ編集が大変でしょうが、あれもなかなか楽しいものですね。

舩曳 編集の中で、私が力を入れていますのが、社内報と機内誌ですね。各地の観光協会さんとタイアップして、その地方地方の観光資源を紹介していくというページも作っております。私もあの本を拾てないで取って置くんですけど、一年二年まとめますと、相当奥行きのある観光ガイドブックができるんです。それぞれ専門的な知識のある人に記事を書いてもらっていますので。先生にお褒めにあずかりましたけれども、そういった面で、これから地元と力を合わせて、大都会にいかに観光資源を売り込んでいくかということが我々の課題です。

二階 観光だけでなく、各地でできる産物なども、機内通信販売で申込んでおけば、後から直送で新鮮なものが届けられるといった形で扱っていらっしゃいますよね。同時に、東京や大きな都市に、そういったものを置くJASさんの販売店のようなものがあればいいと、私は思っているんです。各地方と密接に結んでおられるJASさんだからこそ、いろいろなものを取り扱うことができるでしょうから。

舩曳 実は、それ、考えているんです。今、一流料亭で美味しいものを食べる時代でもなくなってきていますから、JAS直営の居酒屋的なものでも作って、産地直送の地方の産物を提供したら、結構流行るんじゃないかと思いまして。

二階 例えば、大分はねぎの産地ですが、大分からのねぎを「ジェットねぎ」と名付けられていますよね。これには新鮮とか高級品というイメージがありますね。ですから、私は、航空会社が直送で現地の新鮮な産物を集めて売れば必ずヒットするだろうと、今まで密かに思っていたのです。

舩曳 飛行機が儲からなくなってきましたから、私は付帯事業で利益を上げようと考えましてね。そのためには、今、先生がおっしゃったようなアイディアを、ぜひ生かしてみたいと思います。

二階 それはぜひ仕上げて下さい。それから、海外でも食文化というのは大変大事だと思います。例えば、日本ほどこんなにみんなが贅沢な食文化に親しむようになってしまうと、いろいろな国の料理を一つの大きなビルの中に集めて、そこへ行けば世界の各国料理が食べられるとなれば、人は集まってくるでしょう。また、日本人が一週間も10日も海外に出かけたときに、お茶潰けやお寿司を食べてほっとするのと同じに、大使にしろ、外交官にしろ、日本に滞在している多くの外国人も、自分の国のものを食べたいという気持ちがあると思うんですね。そういうことに村応できるようにすることが、国際化や親善に繋がると思います。
今日は、大変お忙しい中、いろいろなお話をお伺いしました。どうもありがとうございました。

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