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「観光立国宣言シリーズ」

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日本経済再生は夢のある観光振興で

          (株)日本交通公社会長・(社)日本旅行業協会会長
松橋 功

 代表的な平和産業の一つである観光産業は、今や国の基幹産業に成長した。しかし、海外に行く日本人は多いが、来日する外国人旅行客は少ない。旅行業界のトップと、集客のための施策を検討する。平成11年11月「政府広報」対談

まつはし いさお

昭和8年東京都生まれ。31年早稲田大学商学部卒業。同年(財)日本交通公社入社。57年(株)日本交通公社取締役、平成2年同代表取締役社長を経て、8年同代表取締役会長となり現在に至る。9年6月から(社)日本旅行業協会会長。

二階 きょうは、ようこそ。お忙しい会長に無理なお願いをしまして。

松橋 ご多用のところをこういう機会を与えて頂きましてありがとうございます。
運輸行政そのものは非常に多岐にわたっているわけですけれども、運輪大臣として官邸で抱負を語られた際、特に観光をクローズアップしておられまして、私も、一業界という立場ではなくて、国民的な視点からしても大変心強く感じているわけです。

二階 私がそもそも観光の道に関心を持ち始めたのは松橋会長のおかげでして、この席でお礼を申し上げなくてはいけないと思っております。ご記憶におありかもしれませんが、私が海部内閣の運輸政務次官のときだったと思います。日本とアメリカとの最初の観光協議に、当時、社長におなりになったばかりの松橋さんとご一緒に回らせて頂きました。

松橋 はい、一九九〇年です。

二階 その旅すがら、いろいろなお話を伺ったことで、人間松橋さんに傾倒するとともに、また観光産業に私もいささか微力を尽くさなければならん、そんな思いをあの旅行中に持ちました。

松橋 当時を振り返りますと、一緒に旅行させて頂いて、政治という観点からツーリズムに対する取組みというのはこうあるべきだということを大臣が身をもって示された、と私も感じました。今、懐かしく思い出しています。

海外との観光交流が生む
相互理解の進展と世界の平和

二階 日本とアメリカとの観光交流ということは、やはり両国の貿易摩擦の問題だけではなくて、もっと広い範囲で考えなくては。「観光産業は平和産業だ」とどなたかおっしゃったのですが、私もまさにそのとおりだと思っています。平和な国、平和な地域にのみ存在し得る産業です。大砲や火薬をつくる国とか地域は、戦争中ならそれが仕事になるかもしれないが、観光に関しては、およそ平和でなければだれも観光客は寄りつきません。同時に、観光交流をしてその国を訪問したり、その地域を訪問した経験が一度でもあれば、その国に村する理解とか愛着が全然違ってきます。

松橋 今みたいに交通事情が発達していないときですから一概には比較はできないわけですけれども、かって、ケネディ大統領が、観光交流というものがもう少し盛んであったならば、おそらく第二次世界大戦は起こらなかったろう、こういうことを言われたと記憶しています。まさにおっしゃるとおりですね。

二階 我々がアメリカヘ行ってみて、この国に宣戦布告したのかと思うと、何だか身の毛がよだつというか、何と世界を知らなかったかということを思いますね。だから、外国と交流した人、あるいは留学した人、仕事を通じてでも、あるいは学生でも、その国に住んでみたことのある人は全然違います。
私の郷里はカナダとの交流があります。和歌山県日高郡美浜町の三尾村という地域で、北アメリカといわれていたころのカナダ、バンクーバーの周辺に、鮭をとる漁師さんが次から次へと移住していった結果、三尾村に今住んでおられる人の数よりも、カナダへ行っている人の数の方が多いのです。そういう地域の人は、日本とアメリカの関係、日本とカナダの関係についてのセンスのレベルが高いのです。ほんとにアメリカなんかと戦争してはいけないのだ、アメリカというのはほんとにいい国なのだから仲よくしなければいけないのだ、ということをアメリカに住んだ絶験のある人は、我々が子供のころからよく言っておられました。
今、世界各国をみんなが旅行している。特に日本旅行業協会などが海外へ送り出してくれている年間一六〇〇万人もの人たちが、帰ってきてその国の話を地域で、隣近所やいろいろな会合へ行ってお話をされます。このことがすばらしいことだと思っているのです。

松橋 そうですね。国の大きさとか力ということのみならず、その国の人がどういう考え方を持って、どういう行動をしているか、ここをお互いに理解することが、まさに国際化の一歩ですね。

二階 そして、そこから相手を尊敬したり、相手を理解したりすること、これが一番大事なことですね。世間知らずですと、自分や自分の国が一番偉いみたいに思って、相手を何となくさげすんで満足感を持ってしまう。こういう人たちが多い限り、国際的にはなりませんね。そういうことに対して観光が果たしている役割というのは、私は非常に大きいと評価しているのです。

松橋 そこで、近年、観光に対する期待というものがますます高まってきているわけですけれども、観光行政に大変造詣の深い、かつまたご見識を持っておられる大臣の観光行政に対する抱負といいましょうか、意気込みというものがあればお聞かせ頂きたいと思います。

二階 まず、海外との交流ですね。観光交流にお出かけになる人たちは平和の使徒だというふうに思っているのです。今、ご承知のとおり一六〇〇万の人々が海外に出かけている。それはそれで大変すばらしいことだと思って、これはもっともっと奨励していくべきことだと思っているのです。
ただ、残念なことに、今、海外から日本へお越しになる観光客は三七〇万人ぐらいでしょうか。一応、四〇〇万人と言っているのですが、私はこれを倍増して八〇〇万人にしよう。そのためにどうあるべきかということの努力をこれから傾けていこうと考えています。
この間、全国旅行業協会(ANTA)の会長当時、パナマの大使が帰任する直前に、日本パナマ友好議員連盟の会長である渡部恒三衆議院副議長のご案内で、その大使の送別会のような席がございました。観光に対して努力をしなければいかんと思っている私にとっては、何かここで観光に熱心なパナマの大使に協力したいという気持ちになりまして、ANTAの雑誌でパナマの宣伝をするから原稿を持っていらっしゃいといったら、何を聞き間違えたか、ANTAは傘下会員が5800社あると言ったからか、6000冊のパンフレットを私の議員会館に送ってきました(笑)。私も最初は戸惑ったのですが、せっかく一国の大使がお持ちになったものを、勘違いだ、パンフレットに掲載するだけの原稿が一部あればいいのだというのではいかにもと思いまして、5800の会員に郵送するようにということを指示しました。
そしてANTAの総会で私は「パナマの大使」という題で、すべからくこのように我が国の大使もそういう方向で観光に努力をして頂きたいと言いました。運輸省から海外に出ている人たちもおりますし、それぞれの省から海外に出ている人がいっぱいいるわけです。けれども、自分が務めている国の人たちが何人日本へ行ってくれただろうか、そこに思いを馳せる気持ちがなければ、本当の意味での外交にならないのではないかと、私は素人ながらそういうことを考えているのです。

松橋 先生、すごいことをされましたね。あっというまにパナマが理解されたということになるわけですからね。

二階 おかげでパナマの大統領から、パナマ運河の開通式だとか何かに二階というのを呼べということで盛んにラブコールが来るようになりました。
日本は行ってみたい国の32番目
これは何とかしなくては・・・・・

二階 あの国は小さいからとか、こちらは大きいからということで判断するのではなくて、すべての国にそういう呼びかけをしていかなくてはなりません。日本に年間わずか四〇〇万人足らずの外国人観光客しか来て頂けないのですから。松橋会長もご承知のとおり、海外で統計をとってみると、日本は行ってみたい国の32番目になっているのです。これはやはり日本としては考えなければいけないですね。島国であるとか、遠いとか、言業の障壁があるとか、理由はいろいろあるでしょう。しかし、15番目だとか20番目だとかといえば承服しなければならんかもしれませんが、32番目ということを全国の皆さんにも理解して頂きたい。

松橋 ランキングが32位ですよね。アジアでも8位です。アジアの中でも、韓国よりも下なんです。GDPが世界第二位の日本として、これはいささか屈辱的な数字ですね。

二階 この間、小渕総理始め数人の閣僚が参加して第二回日韓閣僚懇談会が済州島でございました。私は観光についての発言の機会がしばしばございました。二〇〇二年のワールドカップで、おそらく日本と韓国以外の外国の観戦者は一〇〇万人に及ぶだろう。同時に、テレビを見る人が延べ四〇〇憶人。お互いに四〇〇億人という数字を口にしたことも滅多になくて大変驚いているのですが、やはりこの大会に対しての韓国側の熱の入れ方というのはすごいですね。そこで私は、古来、観光は国の光を観るという言い伝えがあるが、我々はお互いに日韓の間における観光交流をもっと熱心に、情熱を傾けてやろうではないか、ということを文化観光担当大臣と話し合ってきました。
大変お世話になっているWTO(世界観光機関)の総会が二〇〇一年九月にソウルと大阪で開催されます。これがちょうどサッカーと同じように開会式は韓国で、閉会式は日本でということで開催されます。世界の一三〇か国から観光関係の二〇〇〇人以上の人が訪れるのではないかということが言われています。このチャンスをやはり日本は活かしたい。行ってみたい国の32番目とい、汚名を返上するチャンスだと思うのです。

松橋 おっしゃるとおり、絶好のチャンスだと思います。21世紀の幕開けを飾るにふきわしい国際観光の一大イベントですから、盛り上げたいものですね。観光業界挙げて協力をお約束したいと思います。

二階 しかもワールドカップの前年に開かれる。しかもそれが韓国と日本との共同主催というのは、本当にサッカーと同じことです。私は率直に思うのですけど、今申し上げた観光客四〇〇万人を八00万人に倍増しようと思うと、やはりアジアの人たちが日本を訪ねてくれなければだめなのです。だからアジアの人を迎え入れること、これを、私はこれからの観光政策では重点に置いていきたいと思います。

松橋 今、アジアから日本を訪れる人は四〇〇万人の約五五%を占めているわけです。かつて我々がアメリカを見るがごとく、これらの人々は、日本を高く評価しているところがありますでしょう。それにまた魅力もあるわけです。だからやはりこのところに重点的な政策をあてながら、アジアの人に日本へ来てもらう、これが一番大事でしょうね。

二階 アジアの方々とはお互いに親近感があるわけですから、外国人観光客の訪日に関してのキャンペーンは、このアジアに焦点を当てたいというふうに思っています。

松橋 同時に、欧米からも日本にもっともっと来て頂くということをやらなければいかんと思います。日本という国そのものは、産業国というイメージだけが先行していて、いまひとつ「美しい国日本」というイメージがはっきり理解されていないというところがあります。

二階 私の乏しい経験ですけど、例えばアメリカからどこかの市長がおいでになるとか、あるいはアフリカから友好議員連盟の会長さんがお見えになるとかといわれたとき、私の選挙区は紀伊半島の地方の都市でございますが、その田舎へとご案内したんです。そうしたら「私は数回日本へ来た。東京のホテルに滞在して、東京で会議をして帰った。しかし、それは日本ではなくて、アメリカと同じだった」と言う。だけど、私の選挙区へお連れして、那智の滝だの、魚の養殖とか、あるいはお寺とかごらんになったら、興奮して、「初めて日本へ来た感じだ」と、こういわれるのです。

松橋 そこが大事なんですね。

二階 そして市長一行の宿泊先は、畳の部屋ばかりでベッドが一つしかない、そういう地方のホテルでした。私は、市長さんだけベッドで休まれるかとお尋ねしたら、全員畳だとおっしゃるのです。温泉へいよいよ入るというので、私は何をしているか心配で風呂場へ見に行ったのです。そしたらプールと間違えて風呂の中で潜っているのです。日本の浴衣を着て、「これはいい」と(笑)。
この間、カナダと日本との観光交流の第二回目の世界観光大臣会議が大阪であったときに、私の郷里の南部川村とか白浜町などでも歓迎会を開催することにしたわけです。
「カナダの観光大臣などがおいでになる。どう受け入れたらいいか、どう対応したらいいか」と最初は困惑したんです。結局、備長炭の炭焼き、あるいは梅干しを漬けるところをお見せして、村長夫人等にエプロンがけでお茶を出して接待して頂きました。その時の思い出話が、今でもカナダのいろいろな要人から聞こえてくるのです。「南部川村へ行ってすばらしかった、白浜へ行ってすばらしかった」と。
だから、我々は余り飾りたてしないで、親戚の人が来たようなつもりで、地のままでいくということが大事ですね。そのかわり気持ちだけはみんなで温かく観光客を迎え入れる、この訓練が大事なのでしょうね。

松橋 おっしゃるとおりですね。日本にはそういう魅力というのがいっぱいあるのです。それが必ずしも発信されていない、あるいはうまく時代に合って再編成されていない、再創造されていないというところに問題がある。そこをもう一度原点に立って見直しながら、日本のいいところを海外に向けて発信するということですね。

二階 それと同時に、先ほどアメリカやヨーロッパの話も出ましたが、私はアメリカ、ヨーロツパあるいはアジア、それぞれの国の若者たちを大いに日本へ呼ぶために、この人たちだけ特別安い料金で回れるように、例えば、国際的な国民宿舎のようなものとか、あるいは国際的なユースホステルのようなものを検討する必要があるのではないかと、前々から温めておった構想があるのです。少し落ち着いてきましたら、これから運輸省の観光行政の中でも考えてみたいと思っております。
 若いうちに、学生のころ、お金のなかったころに日本へ行って、どこそこの町へ行って親切にされた、ということが記憶にあれば、やがてその人たちの中から、ケネディも、プッシュも、あるいはクリントンも生まれてくるかもしれない。別に何も大統領ばかり生まれなくたって、各界で活躍するいろいろな人たちが、青年期に日本での好印象の体験を持っているということ。世界中にそういう人をこしらえていく。これも観光業界の皆さんにもご協力頂いて、今まだあいている施設はいっぱいあるわけですから、そこに安い値段で宿泊させてあげて、また次のところへ旅に送り出す。サイクリングなんかで回っている人たちもいますよね。そういう機会を若いころに提供して差し上げるということも大事だと思います。
 私は前々から、松橋会長のご協力も頂いて「日本の観光を考える百人委員会」というものをつくって、多くの皆さんのご意見を伺いながら国内観光の振興に対応してきました。その努力のせいもあって、今ようやく、どこの県の知事さんも、市長さんたちも、観光を語るようになってきました。この勢いで観光振興にみんなが立ち上がって、その町その町の特徴をアピールしながら観光産業の発展につなげていけるようにしたいと思っています。

松橋 確かに地域行政を拝見しますと、交流人口をふやす、その中心は観光であるという認識が非常に高まってきて、今おっしゃったとおり、知事さんと話していると、観光、観光ということを頻繁にいわれるようになりました。

二階 今、松橋会長は引っ張りだこではありませんか(笑)。

松橋 ほんとにそういう面では私も大変心強く思っています。これが日本全体の政策と一緒になって、外国人観光客に日本にもっともっと来て頂けるようにしたい。日本のいろいろな活性化の人的交流に観光が果たす役割が非常に大きいと思うのです。経済的な効果も、あるいは雇用に対する貢献も大きい。そのところの盛り上がりができれば非常にいい形になると思うのです。

二階 県の組織に観光課を置いて頂いているところがたくさんあります、部もいくつかあるようですが、せめて観光の専門家をそれぞれの行政の中で養成して頂いて、かたや国際的な観光を担当する、かたや国内の観光を担当する、両々相まって観光振興に本気で取り組んで頂ける県及び市町村に対して、私は運輸省の観光行政をあずかるものとして積極的な協力をしていけるような道を今探っているところです。これも松橋会長にぜひご協力をお願いしたいと思います。

観光産業は基幹産業に成長
新しい雇用機会創出に全力投球

松橋 観光の重要性というのは理解はされていますけれども、なかなかいまひとつ認知されていないというフラストレーションを我々は感じているのです。

二階 私も観光産業の社会的な位置づけ、あるいは行政の上での位置づけとかいうことに関して、かねてより不満を持っている一人なのです。例えば、観光産業は国内需要が二〇数兆円。経済効果は五〇兆円に及んでいます。五〇兆円規模の産業ですから、他の産業と比較しても、堂々と21世紀の基幹産業となり得る条件を備えています。ですから私は、経団連とかいろいろなところで、観光関係の代表が重要なポストに位置するということでないと、日本の景気浮揚村策もいまひとつ画竜点晴を欠いているのではないかと。
 今度も、日産自動車が二万人もリストラするということで大騒ぎになりました。今、労働大臣が閣議のときに私のお隣なのですが、牧野労働大臣が大企業の社会的責任はどうするのだということで大変憤慨をされておりました。他の閣僚もご協力をということでありましたので、さっそく、私の方は、観光産業だけで二万人の新しい需要を呼び起こそうということで、労働省とも協力し、私は二万人の新しい雇用の達成に全力を傾けたいと思っているのです。小渕総理のサポートもありました。そうしますと、観光産業というのは隅に置いておけばいいというふうな産業ではないということが認知されると思うので、これも、業界全体のご協力を得たいと思っております。
 それと、先ほど申し上げた、観光関係の代表が日本の国の社会的な立場でもっとセンターに位置するようなことでなければならないとい思いは常に持っているわけです。今般、日本国中の観光産業に従事する人、あるいは観光産業を業として行なっておられる人たちを総ぐるみにした「観光版経団連」とも言うべき「観光産業振興フォーラム」が設立されました。このフォーラムの設立を機に、観光関連の産業界が一体となって観光振興に取り組み、日本経済の活性化に役立って頂くことを期待しているところです。
 政治的な意味でも、関係者のご努力で、例えば祝日三連休とか、あるいは海外旅行四泊五日の実現とか、そんなことを今までお互いに努力してきたわけですけれども、これだけ広範な、これだけ幅広い、これだけ各県の知事や市町村長の皆さんのバックアップを頂ける、また頂いておる産業の発言が国政の場では小さいのです。ようやくこのごろ官邸の中でもいろいろな審議会等で観光が語られるようになりました。小渕総理のリーダーシッププで、日本人の平均的な観光の宿泊が一・六泊であったのを、二泊にするのだという意気込みで対応して頂いていることは大変顕著なすばらしいことだと思うのです。

松橋 雇用に対する観光の貢献度というのは非常に大きいわけですね。今のところは観光産業に従事している人が約二〇〇万人。いろいろな意味での産業関連効果からいくと四〇〇万人を超している。世界的にも就業者の一〇人とか一五人に一人が何らかの形で観光に携わっているようですね。

二階 私のささやかな経験ですけど、観光の発展途上国では一五人に一人、先進国では一〇人に一人が、何らかの形で観光産業に職場を得ている。ですから、一五人に一人を一〇人に一人にするくらい頑張るということになりますと、この裾野は極めて広いわけです。今、四〇〇万人の失業者ということで国は困り果てているわけですから、「観光産業も立ち上がりますので、他の産業も頑張ってください」ということになれば、景気回復にも大きな役剖を担うことになるでしょうね。

松橋 ぜひ推進して頂きたく思っております。
 話は変わりますが、情報というものがいろいろな意味で時代のキーワードになってきています。情報と観光という結びつきについて、大臣としてはどのようなお考えをお持ちでしょうか。

二階 私は、ANTA(仝国旅行業協会)の会長のころ、これからはインターネットや情報通信によって少なくとも観光業界は大変な嵐の前に立つことになると言ってきました。それは、いい意味で情報ネットワークの推進によって集客能力をふやすという利点もある。若い人など、インターネットを活用して旅行情報、観光情報をどんどん取れるようになってきているわけですから、観光旅行業そのものの存在が脅かされるようなこともありますが、私はそれよりも利点の方が多いと思います。ですから、観光産業の情報化ということに関してJATA(日本旅行業協会)にもぜひリードして頂きたい。今、他の観光関係の業界もその方向で準備しておりますが、この推進に運輸省としても何らかのインセンティブをつけていくような方策はないか、ということを考えているところです。

松橋 これからインターネットを通じて情報が飛び交う。それをどうやって業界の発展のために生かしていくか、ここのところですね。

二階 そういうことですね。だけど、観光関係の皆さんが国民の皆さんに情報提供してくださっているあの量というのは大変なものですから、あれがそれぞれの事業に着実に結びついていくようなことを期待しているわけです。
 今、北海道開発庁長官も兼務いたしておりますので、北海道の観光に関してこれから取り組もうと思っているのですが、以前、札幌のあるホテルへ行きましたら、北海道の観光に関してのいろいろな書物が並んでいるのです。私はそれを見て感動しました。私がもし学生なら、ここへ一週間ほど滞在して北海道の歴史や観光をむさぼるようにして勉強したいなと思ったことがあった。先般、北海道開発庁長官として初めて北海道へ行きまして、たまたま同じホテルヘ泊まりました。そこで蔵書を眺めまして、私が前から主張している観光図書館、これをぜひ実現したいと改めて思いました。このことには総論賛成なのだけれども、だれもやる気を起こさない。だから、北海道開発庁の大臣の控室として大きい部屋がありますので、そこに本箱をたくきん持ち込んで、観光図書館を私がつくってやろうと、今、準備をしている最中なのです。
 映像を使うことも考えています。例えば、流氷を見たい、流氷とは一体どんなものかといったときに、本州にいても、九州にいても、流氷のビデオを見ようと思ったら、申し込めばそれがすぐ見られる。どこそこの火祭りがすばらしい、どんな状況かということも見られる。このように観光に対する知識を持って、あるいは文化や歴史に対する知識を持ってそこを訪問すると、何倍も楽しみが深くなるのです。
 ずいぶん以前にバス会社の方と話していたら、動く観光図書館ということで、大型パスを改造してやったらどうだろうかという話になりました。それもやろうということで、これから業界の皆さんのご協力も得なければなりませんが、そういうものをそれぞれの地方にもつくれば、そういうところへ観光バスでみんなで訪問することだってできますし、学生なんかもいい勉強ができるようになります。
 さらに、高齢化社会になるということを考えなければいけません。高齢者の皆さんの生きがいは何かというと、単にゲートボールをするだけでみんなが満足できるわけがない。ゲートボールも結構ですが、やはり知的なトレーニングを続けることで、みんながいつまでも健康でいられることになるわけですね。

松橋 大臣の北海道の観光振興にかける情熱に期待したいと思います。

二階 北海道を訪れる観光客は年間六〇〇万人ですが、今後一〇年間でこれを一〇〇〇万人にしようと、先般「北海道の観光を考える百人委員会」がスタートしました。これからは、さらに北東北、四国、中部、九州など全国各地で観光客の増大策を展開していきたい。同時に関係者の意識改革を呼びかけたいと思います。

松橋 高齢化社会になると、高齢者の方たちの生きがいの問題もありますね。

二階 私が前に山形へ伺ったときの経験ですけれど、山形の高等学校の元先生だといわれる方が、観光客に一所懸命、情熱を込めて歴史を語っておられました。その姿を見まして、その方の生きがいにもなる、それから観光客の生きがいに刺激を与えることにもなる、すばらしいことだと、私はわきから手をたたいてしまいました。そういう面もこれから取り組んでいきたいと思っております。

松橋 同時にもう一つ情報に関して、日本の情報を海外に発信する、このところも今、十分とはいえないというふうに思っています。その辺はどうお考えですか。

二階 先ほど申し上げましたパナマ大使のようなことを、日本の海外におられる商社の人も他の方も含めて、オール日本で日本の観光振興に役立つようにしたい。日本においでになったらこんなにすばらしいところがあるということを一通りみんなが海外で語れるような、そして乾杯するついでに、我が日本にどうぞお越しくださいというメッセージをみんなが発せられるようにならなければいけないと思うのです。そのためにはあらかじめ情報をインプットしていかなければいけない。これは観光業界全体の責任だと思うのです。

松橋 そうですね。国としても全体的にもう少しお金を使ってもいいかもしれませんね。特に情報の発信ですね。

二階 そうなんです。観光振興あるいは情報通信に対して、正直にいって今まで対応ができていないのです。ですから、今ご指摘のようなことはこれから本当に大事なことです。

松橋 先週の土曜日、私、シンガポールから帰ってきたのですが、シンガポールの観光に対する取組みについて再認識をさせられました。あの小さな国で観光振興に何と一〇〇億円を使っているのです。驚きました。前からそんな話は聞いていましたが、改めて再認識させられました。
最後に、21世紀を間近に迎えまして、21世紀の観光に対する抱負あるいは期待について一言お聞かせ頂きたいと思います。

二階 WTO(世界観光機閑)の資料によりますと、世界の国際観光客数は九八年の六億三〇〇〇万人から二〇一〇年には一〇億人になるだろう。さらに二〇二〇年には一五億六〇〇〇万人に及ぶだろう。雇用の数は、九七年の二億四〇〇〇万人から、二〇〇六年には三億三〇〇〇万人に増大すると予想されています。観光は21世紀においてますます発展することが予測され、私は日本においても世界においても夢のある基幹産業になり得るということを確信しております。
平成十三年一月に中央省庁再編をいたしますので、政府における観光行政の取りまとめは国土交通省が行なうことになります。観光とかかわり合いの深い分野を所管する建設省や国土庁や北海道開発庁を運輸省と統合することによって、これまで以上に一体的に観光政策を推進できる可能性が生まれるわけです。今まで観光といえば何となく遊びみたいなことで、観光に予算などつける必要があるかと言われてきました。あるいは、私が職場旅行の非課税枠を、三泊四日から四泊五日にしようとしたときに金持ち優遇だというふうな話がありまして、これにはずいぶん抵抗あったのです。自慢話になりますから控えておりますが、それは本当に苦労しました。
大臣の立場で今こういってしまうのはどうかと思うのですが、外国から観光で帰ってくるときのお土産などに税金をかけていることに関しては、少し検討した方がいいのではないかと私は今、個人的に思っているのです。体制を整えて対応したいと思います。
21世紀は国際相互理解の時代ですから、平和のパスポートである国際観光の交流を国仝体で取り組んでいきたい。そして、国民生活に真のゆとりと潤いをもたらす観光、地域社会の振興という点からの国内観光にも、運輸省としては全力を尽くしてまいりたいと思っています。
私は、観光業界の皆さんに今日まで大変ご声後を頂いてまいりましたわけですから、今こそ観光問題に関してみずからの思いを実現できるように、一層努力したいと決意をいたしております。

松橋 よくわかりました。どうもありがとうございました。

 

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