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「観光立国宣言シリーズ」

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観光振興のために
 組織づくりと人づくり

          (社)日本観光協会会長
石月 昭二

 観光産業をどう成長させていくのか。懸案であった[観光産業振興フォーラム」が発足し、各地に[観光を考える百人委員会」が設立されたことで観光振興の基礎固めはできあがった。その後の展開と観光の将来像を語り合う。

いしづき しょうじ

昭和23年運輸省入省。大臣官房総務審議官。海運局長を経て海上保安庁長官。退官の後、新幹線鉄道保有機構理事長。日本国有鉄道清算事業団理事長。現在、(社)日本観光協会会長。−−平成12年2月「月間観光]対談

観光振興のための
組織づくりと人づくり

二階 石月会長も全国を飛び回って、ご多忙の日々が続いているようですが、お元気の秘訣は何でしょうか。

石月 元気に働いていることを認めて頂いて光栄です。ろくな運動もせず、不摂生ばかりしているものですから、友人の医者に、いつも脅かされています。強いて健康法といえば腰痛防止のため、朝十分くらい真向法の腰の屈伸をするのと、寒ければ着る、暑ければ脱ぐと、すべて自然体で、無理をしないように心がけています。

二階 今日まで、ずいぶん旅行もなさったでしょうが、石月さんの最も印象に残る旅について伺って見たいと思います。

石月 人は異文化体験を求めて旅をするというのが私の持論ですが、やはり見る観光は海外旅行で、国内観光は保養と気分転換の旅が主流のように思えます。
十年ほど前に家内と二人でインドの各地を、行く先々でガイドと車を雇って旅行しましたが、象の背中に乗って山の上のヒンズー寺院を訪れたり、湖の中に白鳥のごとく浮かぶマハラジャの豪華なホテルを訪れたり、何千という路上生活者のこの世の地獄のような悲惨な生活を目撃し、人間の生と死とは何かを考えたりしました。
今でも思い出深い印象に残る旅でした。大臣の旅、観光についてのお考えはいかがですか。

観光産業育成のため
フォーラムと百人委員会を設立

二階 二十一世紀の中核的な産業の柱として、観光産業に内外から大きな期待が寄せられている今、精力的に観光産業の育成に取り組んでいきたいと考えています。
また、「観光産業振興フォーラム」や「日本の観光を考える百人委員会」といった新しい取組みを進めることで、観光の新しい可能性が見えてくるものと思っております。
小渕総理が提唱されている「生活空間倍増戦略プラン」でも、観光がずいぶん取り上げられました。観光は、我が国の経済や国民生活の向上、地域振興、雇用の拡大等に貢献していくことが大きく期待されています。
 観光産業の幅の広さ、奥行きの深さ、またその国の文化そのものである観光を推進する役割の重要さを、改めて感じますね。
 特に、最近では各県知事、各市町村長さんも観光に注目されて、地域振興の大きな核として、積極的に取り組んで頂いていることはありがたいことです。

石月 今年は、二〇〇〇年という節目の年に当たります。大交流時代とも言うべき時代の幕開けを迎え、新しい時代に観光の果たすべき役割と重要性を考えると、身の引き締まる思いがします。

二階 観光産業の応援団のような仕事を、石月さんとご一緒にできることを喜んでいます。

石月 大臣は、平成二年と五年に運輸政務次官をお務めになるなど、運輸大臣ご就任以前から観光行政について大変豊富な経験をお持ちでした。
そのような大臣のご就任を、私どもは心から歓迎申し上げていたところですが、ご就任後のご活躍は、短期間に「観光産業振興フォーラム」や各ブロック別の「観光を考える百人委員会」を設立されるなど、本当に速いですね。
 観光に関係する私どもが観光振興に努力するのは当然のことですが、大臣が観光にご理解頂けるということは、関係者として本当にありがたいことだと胸を躍らせています。

二階 皆さんのご協力のお蔭ですよ。それと運輸省の仕事は石月大先輩がご承知の通り、こればかりではありませんから、やれる時は進めておきたいと思っています。しかし、今日いろいろ教えて頂こうと思っていますから、どうぞよろしく。

石月 こちらこそよろしくお願いします。私は新しい時代のキーワードの一つは、「癒し」であると思います。観光は人を幸せにします。   
遊ぶことによって人間は解放され、人生にゆとりが出て、観光によって、人間は自分たちの一番相応しい姿を取り戻し、癒されるのではないでしょうか。
また、産業としての観光の重要性は、経済のソフト化が進む中で、今後一層高まっていくでしょう。
 このように、国民生活の向上や今後の我が国の経済の活性化を図る上で重要な役割を果たす観光を、新時代に相応しいものにしていくことについて、今後ともご指導を頂きたいと思います。

二階 我が国の経済の発展や国民生活の向上、地域振興、雇用の拡大等に貢献していくことが期待される観光は、やがて二十一世紀の基幹産業になるだろうということは、今ようやく市民権を得ようとしています。
 我が国の観光産業の年間売上高は、関連産業への波及効果も含めると約五〇兆円にも達しています。また、特に雇用の面では、観光産業の就業者数は約一九〇万人、関連産業を含めると全就業者数の六・三%に相当する約四一〇万人になります。
観光産業の存在意義は、大変大きなものがありますよね。

石月 全く大きな産業に発展してきましたね。時代の波、時代の要請を感じます。

二階 日産自動車の二万人リストラ問題は、大変な騒ぎになりましたが、観光分野での雇用創出という大きな期待に応えるためにも、運輸省では二万人の新しい需要を呼び起こそうと取り組んでいます。    
会長にご協力頂いている「観光ワーキングセミナー」も、この一環です。全国から大きな反響が寄せられています。

石月 「観光ワーキングセミナー」は平成十一年二月十四日から始まりまして、三月未までに都道府県庁所在地を中心に全国一〇〇か所の会場で開催いたします。
運輸省の補助事業として私たちの協会が実施しているわけですが、観光サービス業での就労を希望する人を主な対象にしたセミナーで、内容の大変充実したものになっています。

二階 先ほど、全就業者数の六・三%と申しましたが、これは国民の一五人に一人が何らかの形で観光産業に携わっていることになります。
観光の先進国では、一〇人に一人が観光産業に職場を持っているようです。何と言っても観光産業は裾野の広い産業ですので、日本でもそうなるように頑張ることで、雇用創出、景気回復に果たす役割も実に大きいですね。

石月 大臣のリーダーシップで、平成十一年十二月に、観光関係企業や関係団体を広範に結集した観光産業振興フォーラム(代表幹事・堤義明氏、轄総ロ観光開発研究センター会長)が設立されました。このフォーラムの設立については、大臣の観光振興にかける並々ならぬ熱意を感じました。

二階 「観光産業振興フォーラム」は、私がその実現をかねてより目指していたものです。重要な責務を担っている日本の観光業界全体が足並みを揃えてひとつの目的に向かっていくことが必要だと、私は常々申してきたわけです。
オール日本の観光関係企業と関係団体が総力を結集することで、観光産業の日本経済における位置付けを高め、日本経済を牽引する立て役者の役割を果たすことができると、私は確信しています。
 これは、「観光版経団連」と言うべきもので、観光地づくり、祝日三連休化、訪日旅行の促進、観光情報化の推進などさまざまな課題について、航空業界、鉄道業界、旅行業界をはじめとする広範な観光産業が一体となって取り組んで欲しいと思っています。

石月 私も、幹事の一人として、また当協会として事務局を仰せつかっている立場でもあり、この「フォーラム」を通じ、観光産業全般にわたる諸問題の解決に全力を挙げていきたいと思います。

二階 観光関係者が幅広く結集することは、それぞれの地域の観光振興においても大変重要なことです。
そこで、地域内外の観光関係者、有識者の幅広い英知を結集する場として、私は各ブロックごとの「観光を考える百人委員会」の設置を提唱し、これまでに、北海道、北東北、沖縄、四国の各ブロックで発足させることができました。石月会長にもそのメンバーとして、各地で貴重なご提言を頂き、本当にありがとうございました。  
中部、関西、九州の各ブロックでも順次発足することにいたしております。

石月 総合産業である観光について、観光業界にとどまらず広範な分野の方々が議論し、提言する「観光を考える百人委員会」が各地で発足したことは、国内観光を推進する上で大変有意義ですので、当協会としても最大限の協力をしていきたいと考えております。
それにしても、短期間で多くの組織の立ち上げにまで進められた大臣のリーダーシップには心から敬服いたしております。

ニ階 これは、各ブロックの知事や関係者の皆さんに協力を頂けたからこそ、また地域での観光振興に取り組む熱意があるからこそ実現したもので、大変感謝しております。
また、その熱い思いに応えるためにも、運輸省として積極的な支援をしていく所存です。

石月 観光志向の多様化、高速交通網の進展等で行動範囲が広域化する消費者に応えるためには、広域での観光振興がますます重要になっております。
「観光を考える百人委員会」は、このような広域観光の振興という視点からも、大変効果的なものと思います。

余暇活動を拡げた祝日三連休
次の政策課題は海外からの集客観光

石月 今年の成人の日(一月十日)は初めてのハツピーマンデーでした。大臣に格別のご指導を賜り実現した祝日法の改正によるものです。大きな効果、驚くような効果がありました。本当にありがとうございました。

二階 祝日法改正は、平成十年十月の臨時国会で実現したのですが、その際私は、自由党国会対策委員長としていろいろ調整にあたりました。実現して、本当に良かったと思っています。
 初めてのハッピーマンデーですが、国内旅行で五割、海外旅行で二割の増加ということで、やはり、一日、二日の休みではあわただしく、三日の休みは国民に安らぎ、休養を与えることになっているのだと思います。よかったですね。

石月 今回、成人の日と体育の日、この二祝日が月曜日指定となり、「祝日は日にち指定」という固定観念がすっかり変りましたね。
 新聞でも、対象とする祝日を拡大するようにとの論調もみられるなど、今回のハッピーマンデーは大変好意的に受け止められています。これを契機に、休暇や祝日のあり方について国民的な議論が高まり、ゆとりある生活の実現に向けての力強い流れが形成されればと思っております。

二階 私は、そもそもハッピーマンデーは四祝日にすべきだとの主張を申し述べてきました。
 今回の初めてのハッピーマンデーでの旅行、観光の国内外の盛況ぶりをみて、今後ハッピーマンデーを増やしていくことで、間違いなく観光産業が活気づくという見通しがついたわけです。
 ハッピーマンデーに加えて、カレンダーの関係でいくつかできる三連休を合わせて、何とか年に七〜八回の三連休ができれば、旅行の期間も分散されて、各地域の景気対策にもつながっていくことになると考えています。

石月 成人の日の連休には、家族との触れ合いを深められた方も多いのではないでしょうか。ゆっくり休みながら改めて祝日の意義に思いを巡らされた方もいらっしゃったと思います。一人ひとりの方が、新しく生まれたまとまった自由時間を、それぞれの人生観や環境に応じて多様に活用されたことでしょう。

二階 それから、「祝日三連休化」を契機に、欧米のように有給休暇を取得しやすい社会的な環境を整備していくことも重要です。そうすることで、ワークシェアリングによる雇用創出が生まれ、景気の拡大にもつながっていくわけです。
 各方面からさまざまな期待が寄せられる「祝日三連休化」ですが、余暇活動が活発になることで政府がお金を使わずに、経済効果が期待されるわけです。観光だけではなく、家庭や親子関係がよくなりますね。
三日の休みがあれば、お父さんもー日は家庭サービス、一日はお勉強、一日はどうぞ自らの趣味のために…(笑)。

石月 大臣は、ご就任早々の十月に日韓閣僚懇談合に出席されたのをはじめ、一月には中国を訪問されるなど、国際交流に大変熱心に取り組んでおられますが、韓国でも、中国でも、観光が大きなテーマであったと伺っております。

二階 国際観光は、国際相互理解にも大きな役割を果たすものです。国際観光、国際交流は、平和のパスポートを持った人々が交流するのですから、素晴らしいことですね。
平成九年に運輸省で策定したウェルカムプラン21ではおおむね平成十七年までに訪日外国人旅行者数を七〇〇万人に増やすとされていますが、私は、現状の四〇〇万人を八〇〇万人に倍増させたいと考えています。

石月 ご就任早々出席された日韓閣僚懇談会の模様は、日本の新開、テレビ等で、大きく報道されました。特に、サッカーワールドカップが日韓共催で行なわれる二〇〇二年を「日韓国民交流の年」とすることについては、日韓関係の明るい一歩として、取り上げられていました。

二階 訪日外国人旅行者数を八〇〇万人にするためには、韓国からの誘客が大変重要です。その意味で、今回の日韓両国の閣僚懇談会において、金大統領や金国務総理の提唱される「未来志向」による新しい観光交流の絆が、文化観光大臣(文化観光部長官)と私との間で確認できたことを、大変うれしく思っています。大臣は、三月に日本に来てくれますよ。
 二〇〇二年の日韓共催のワールドカップには、開催期間中、両国に世界各国からl00万人が訪れます。また、テレビ等を通して四〇〇億人が、その様子を目にすることになります。これは本当にびっくりする数字です。
ワールドカップの開催を契機に、世界に向けての広報宣伝及び外国人観光客受け入れ体制の整備に、日韓双方の観光施策の緊密な連携を図っていきたいものです。

石月 おっしゃられるとおりですね。また、二〇〇一年のWTO (世界観光機関)の総会も日韓共催により、大阪で開催されることになっております。二〇〇二年のワールドカップもあることですし、大いに両国でアジアの魅力を世界に向けて発信したいですね。

二階 そうですね。二〇〇一年の日韓共催でのWTO総会には、世界の一三一か国の観光の専門家が二〇〇〇人規模で訪れるだろうと思いますので、このチャンスを大いに活かしたいものです。
外国人の訪日旅行者が世界で三二番目だという汚名返上の絶好の機会です。WTO総会を、ワールドカップの前年祭(プレイベント)として成功するよう、力を注ぎたいと思っています。

石月 また、大臣は、先頃訪問された中国でも、日本への中国人団体観光旅行の新たな展開を目指して精力的に取り組まれたと伺っております。中国旅行市場のポテンシャルの大きさを考えますと、大変力強く感じております。

二階 今回の訪問では、何光?国家旅游局長、曾培炎国家発展計画委員会主任ら中国の政府要人の皆さんと話し合う機会を得ました。     
 一連の会談を通じて、観光が国際交流に果たす役割の重要性を改めて感じました。
 中国からの団体観光旅行については、昨年のはじめに中国政府が日本を渡航先に指定したことで、新たなインバウンド市場として一気に注目が集まりましたが、その後は残念ながら目立った進展はありませんでした。
これについては、ビザ問題の調整等に時間を要したからです。両国政府間の実務者協議を開き、何とか桜の花咲く日本の春に、中国からの団体観光旅行の第一陣を迎えられるようにしたいと私は考えています。
 そして、今回の訪問を二十一世紀に向けた日中文化観光交流時代の幕開けと位置付けたいと考えています。新しい時代の幕開けに相応しく、我が国の各界を代表するメンバーと一般の参加者で二〇〇〇人の使節団を結成し、北京及び中国各地を訪問したいと思っています。団長役を平山郁夫さんにお引受け頂きました。

石月 それは素晴らしいことですね。何と言っても、中国は人口一二億人、海外旅行者数も五〇〇万人を超え増加基調にあると聞いております。
中国の皆さんに日本の魅力をPRするとともに、隣国との交流を深めるという点でも大変良い機会になります。

二階 いくつかのチームに分けて、広い中国の各地の省、自治区等を訪問して、親善と交流を深めたいと思っています。

石月 当協会としても、最大限のお手伝いをさせて頂きたいと思っています。
 そして今年、二〇〇〇年はサミットです。私は、沖縄の観光を考える百人委員会のメンバーとして、先般大臣とご一緒に沖縄を訪れましたが、地元のサミットにかける期待あるいは意気込みには並々ならぬものを感じました。

二階 二〇〇〇年サミットが開催され、世界の関心が、九州・沖縄に集まります。この機会を捉えて、欧州のサミット構成国と我が国の重要な観光マーケットである香港・韓国を対象に、訪日旅行促進キャンペーンを実施します。
観光客の訪日キャンペーンについては今後も大々的に行ないたいと考えていますが、今回はその第一陣として行なうものです。

観光立国に欠かせぬ情報発信と
優秀な「観光地」・「人」づくり

石月 二十一世紀を目前に控え、我が国も高度情報化社会を迎えようとしています。我が国におけるインターネットの利用はつい数年前に始まったような気がしていましたが、今では、その利用者は一〇〇〇万人を優に超え、二〇〇五年には四〇〇〇万人に達すると予想されています。
 私どもの協会のホームページ「全国旅SODAN」も、月間二〇〇万件ものアクセスがあり、旅の情報ページとして人気を頂いています。

二階 本当にインターネットの浸透ぶりには目を見張るものがあります。私も時折インターネットを情報収集等に利用しています。
国内だけでなく、世界とつながっているわけですから。想像は、はるかに及びませんね(笑)。
 私は、かねてから、インターネットやその他の情報機器による通信によって、観光業界は情報革命の嵐の前に立つだろうと、言ってきました。

石月 そうですね。インターネット以外にも、カーナビゲーション、携帯電話や携帯情報端末の合計数も五〇〇〇万の大台に達すると言われておりまして、そういった新しい手段で気軽にさまざまな情報を手に入れることができるようになっています。
個人旅行者が多くなってきていることを考えますと、このような情報提供手段の有用性は一層増していくことでしょう。そして、そういったことにどう取り組むかが、観光業界の死命を制すると言ってもよいのではないでしょうか。

二階 特に若い人などは、インターネット、カーナビ、携帯電話等の活用で、独自に観光情報を盛んに取り入れるようになりました。  
こういった状況は、観光関連業者の存在が脅かされるようなこともあるのでしょうが、それよりも、情報ネットワークの推進で、集客能力を増やすという利点の方がより大きいと思います。
 また観光地づくりに取り組む地域の人たちにとっては、自分たちの魅力を、全国、いや全世界に向けて、廉価な経費で発信できるようになりました。これは大きいですね。

石月 私も、最近は、デジタルカメラで撮った写真をパソコンに取り込んだり、インターネットで細かな旅情報を集めたりしておりますが、始めるとなかなかおもしろいものです。
 インターネットで情報収集していますと、その画像情報、例えば地図や写真と言ったものの充実ぶりには感心させられます。観光情報の場合、地図情報が大変重要ですが、カーナビ、携帯情報端末等の電子地図を観光情報に活用していくためには、GIS(地理情報システム) の利用促進に取り組まなければなりません。
 現時点では、このような観光情報が標準化されていない問題がありますので、昨年十一月に旅行企業、情報産業等四〇社を超える企業の参加を得て、観光GIS利用促進協議会を設立しました。

二階 ますます進展する情報の高度化を、観光振興に効果的につなげていくことが必要ですね。観光振興は産業側だけでなく、地域との連携が重要ですが、観光情報を多くの人々に活用して頂くためにも、観光関連産業と地域の両サイドの情報が集まる日本観光協会の今後に期待していますよ。

石月 現代はまことに変革の時代です。これは観光の世界も同様で、国内の観光地は、競争相手として海外の観光地までも視野に入れなければならないという、大変難しい時代になってきました。
 このような状況の中、厳しい観光地間の競争に打ち勝っていくためには、地域住民はもちろん、官も民も、みんなが自分たちの地域を魅力あるものにしていこうという心構えや、努力の積み重ねが非常に大事だと思います。

二階 そのとおりですね。「住んで良し、訪ねて良し」の観光地づくりが重要です。地域ぐるみの観光地づくりは、地域の自然、歴史、文化等の資源を活用していくことで、より良い地域づくりに貢献していきます。
そして、そこに暮らす人々が、地域の魅力を再認識し、住民としての誇りが生まれるのです。良い観光地とは、住んでいる人にとっても、訪ねる人にとっても良い地域ということでしょう。
 政府の「二十一世紀を切りひらく緊急経済対策」の一環として運輸省から日本観光協会に依頼して実施して頂いた「観光地づくり推進モデル事業」も、このコンセプトによるものです。

石月 この事業では、すでに一〇の地域について、観光地づくりのプログラムを策定し、フォローアップ事業も逐次展開しています。各地で着実な取組みが進められています。

二階 その地域らしいまち並みや景観といったものが、そこで暮らす人々の手によって、守られ、つくられてきていることを大変うれしく思います。

石月 大臣のご提言で、今年度当協会に新たに設けました「花の観光地づくり大賞」は、まさしくそのコンセプトですね。今年は、三つの地域を大賞に、八つの地域を奨励賞に選定し、表彰いたしました。
 大臣が早くから「花を愛する県民の集い」「花を愛するネットワーク21」等、花いっぱい運動に積極的に取り組んでおられたのを知り、驚きました。

二階 ライフワークとして、これからも努力したいと思っています。

石月 ところで、他の産業の分野でもそうだと思いますが、観光の基本はやはり人だと思います。

二階 観光業界全体の地位の向上、発展のために最も重要なことは、人材育成ですね。
 以前、全国旅行業協会の会長であった時、観光立県推進会議で網走に行ったのですが、駅には黒い公用車ではなく、タクシーが並んでいたのです。
そして事務局の方は、「この地域のことなら何でも知っている運転手さんに今日はお願いしております。何でもお開き下さい」と言われるのです。
その日は会議の会場までずいぶん楽しませて頂きました。そして、こういうことを企画した事務局の皆さんも、大変素晴らしいと心底感心しました。
 また、「観光を考える百人委員会」を開催いたしました折に、各地で観光振興にご尽力頂いている方々にお会いしましたが、本当に皆さん熱心で、自分のところだけでなく、地域全体、エリア全体という広い視野で取り組んで頂いています。

石月 私どもでは、優秀な観光地づくりを行なっている団体等を表彰する「優秀観光地づくり賞」を設けております。
平成五年度から始めたものですが、これまで二五団体を表彰いたしました。また、九年度からは、金賞・運輸大臣賞をお願いしております。
 こういった受賞地を訪れる機会に恵まれるのですが、そこにはまちづくり、観光地づくりの必ず優れた指導者・仕掛け人がいらっしゃって、そのバイタリティーにはいつも頭が下がる思いです。

二階 優れた人材が育成されるということは、魅力ある観光地ができることにつながりますね。

石月 先ほどの「観光ワーキングセミナー」も大臣の人材育成のお考えが反映されたものと推察いたしておりますが、私どもでも、今後ともさまざまなセミナー等で、人づくりに取り組みたいと考えています。

観光を産業の核に
そのために広域的な取組みを

石月 平成四年度以降、観光振興に大きな役割を果たしてきました観光事業振興助成交付金制度は、特別地方消費税が廃止されることに伴い、今年度限りで廃止になってしまいます。
 このため、平成十二年度以降の観光振興事業のための財源について各方面にお願いしてまいりましたが、大臣のお力により、今各都道府県で来年度の具体的な予算措置を進めて頂いております。

二階 観光は地域振興の大きな核となるものですから、観光振興に取り組まないと言う知事はいないでしょう。
交付金制度は、私が最初の運輸政務次官(平成二年)の頃、当時の奥田敬和自治大臣(故人)に直訴してつくったわけですが、この制度によって、平成四年度から十一年度の八年間で総額約二〇〇億円の予算で観光による各地の地域振興が進められ、特に全国的あるいは県域を越えての広域的な取り組みが進んだこと、そして海外観光宣伝等インバウンド対策が積極的に行なわれたことは大きな成果だと思います。今後この成果をつなげていくためにも、平成十二年以降も新たな観光振興事業の展開が必要でしょう。

石月 特別地方消費税が廃止される中で、また、国も地方も財政状況が厳しい中での新たな財源措置ですから、本当にご無理をお願いしました。

二階 そういう状況だからこそ、せっかく花開きかけている観光振興への勢いを弱めてしまうことになるので、観光が今後の産業の核となっていくのだということを、全国の知事さんに訴えました。

石月 昨年七月に全国知事会から財源措置についての要望が出され、昨年末、自治省のご配慮により、来年度の地方財政計画の中で、観光振興事業についての財源措置が普通交付税によりなされました。    
これを受けて、各都道府県で来年度の予算措置を進めて頂いているわけですが、今後は、従来以上に各都道府県の意向を十分に踏まえて、全国広域観光振興事業に取り組んでいかなければならないと考えています。

二階 厳しい財政事情の中での各県知事の配慮ですから、期待に応えて下さい。そして成果を出して下さい。
 WTOの資料によりますと、世界の国際観光客数は九八年の六億三〇〇〇万人から二〇一〇年には一〇億人に達するだろうということです。観光関係者の雇用の数も、九七年の二億四〇〇〇万人から、二〇〇六年には三億三〇〇〇万人に増大することが予想されます。
 このように世界的にみてもー層重要性を増す観光に、我が国としてもっと真剣に取り組まなければならないことは明らかです。運輸省としても一層の努力をしていかなければなりませんが、どうか全国広域観光振興事業の効果的な展開に、一層のご尽力を頂きたいと思います。

石月 先ほど、大臣から観光情報の高度化について当協会に励ましのお言葉を頂きましたが、地域の観光情報を広域観光に対応できるものにしていくため、全国の観光情報を集中的に収集・管理する「全国総合観光情報センター(仮称)」を、この事業の一環で整備していきたいと思っています。
また、海外からの訪日旅行者の増加策や観光地づくりの推進に引き続き力を入れてまいりますが、人材育成については、特に、市町村等に観光地づくりアドバイザーを派遣する事業などを新たに展開していきたいと思っています。

二階 二十一世紀の基幹産業となるべき観光の振興を図ることがますます重要になっています。
そのためには、観光業界の一体感をつくり出すことが必要であり、日本観光協会においても石月会長のリーダーシップにより積極的なご尽力をお願いしたいと思います。

石月 観光業界として、今後の観光振興のために一致して全力で当たりたいと存じます。本日は本当にありがとうございました。

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