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対談
競争と協力で旅行業の発展を
社団法人日本旅行業協会会長 新町 光示 氏
社団法人全国旅行業協会会長 二階 俊博 氏
週刊 観光経済新聞 二〇〇五年一月五日

 予期せぬテロや災害、旅行者意識の変化、そして急速な情報技術の発展―。
 こうした雨風にさらされて衰弱していた観光業界に、ようやく陽光が差してきたようにも見える昨今。旅行業界団体の両トップは二〇〇五年をどう占い、どの道を歩もうとするのか。日本旅行業協会(JATA)の新町光示会長と全国旅行業協会(ANTA)の二階俊博会長が語り合った。
   (東京・紀尾井町の福田家で)


 ―(司会=本社社長・江口恒明)
観光業界にとって二〇〇五年はどのような年になるだろうか。

海外旅行者数二〇〇〇万人に
国内旅行は振興策が課題

【二階】
 今年は二月十七日に中部国際空港が開港される。これは愛知万博と連動して、観光業界にとってたいへん明るい話題だ。これまでニューヨークのテロ、SARS問題など、そして先般の新潟県中越地震もあり、観光業界は突然降ってわいた事故に苦しんできたが、だんだんと発展の軌道に乗っていくだろう。外国から日本へ来る観光客もビジット・ジャパン・キャンペーン(VJC)で六〇〇万人の大台に達してきた。小泉総理の言われる一〇〇〇万人は決して夢ではない。私が一九九九年に運輸大臣に就任した時、当時の四〇〇万人を八〇〇万人にしようと記者会見で申し上げたが、その八〇〇万人はそう遠くないうちに実現するだろう。そうしたことから、観光産業全体に携わっている人々が「努力すれば道は拓ける」ということが理解し合えるようになってきた。

【新町】
 この数年間、旅行業界にとってはテロだとか病気だとか、いろいろな外来障害が発生して大変困難な時代だった。だが、振り返ってみると、そういう困難な時代の中にも新しい芽が出てきた。一つには、極めて困難な経営状況に陥ってみて初めて、旅行業界の各社が自己改革をして、難局に耐えるような形を作ったことは非常に大きい意義があった。「疾風に勁草を知る」の言葉があるが、危機をプラスに転じたということが言える。それから、テロやSARSのような問題が沈静化し、我々の業界もその場の対処療法だけではなく、将来どうあるべきかと展望を描くときでもあった。例えば、インバウンドではVJC、それからJATAでは海外旅行者を二〇〇七年に二〇〇〇万人にする目標を掲げたし、国内旅行についてもさらなる発展性のある体制を作らなければならないとか、そういう課題にようやく腰をすえて取り組めるような段階にきた。これからが正念場になる。

【二階】
 私はアウトバウンドを二〇〇〇万人にするという宣言をもっと積極的に発信すべきだと思う。国際社会で閣僚が「我々の側から二〇〇〇万人を出すから、外国からは一〇〇〇万人来てほしい」と堂々と発言したっていいくらいのものだ。日本に居て海外にも出ないで「ビジット・ジャパン」「日本に来て」ばかり言っているのは閉鎖的な発想。行ったり来たりすることが観光だ。海外へ出た人がどんどんビジット・ジャパンの宣伝をしてほしい。だが、外国人にしてみれば日本は、ビザの問題、あるいは日本に来てから観光旅行するのに様々なバリアがある。このバリアを除去するために政府や県や市町村や民間がどれだけ努力しているかというとまだまだこれから。外国人客にとって親切な日本にならなければならない。

【新町】
 最近の台湾もそういう状況で、日本から旅行者が来ないとクレームが出てくることもある。やはり二階会長のおっしゃるように、双方で繁栄するような形が望ましい。

【二階】
 日本はなんだかんだ言ったって、個人はお金を持っている。そして国際的にどうかというと、所詮はいまだ島国。だから、海外旅行をして少々のお金を海外に落としてきたとしても、文化と経済、いろいろなことをたくさん吸収して帰ってくるわけだから損にはならない。

 ―四月に改正旅行業法が施行されるが、新業法をどう捉えているか。

【新町】
 従来の旅行業というものは、斡旋だとか仲介だとか、「代理機能」であり、法律体系もそういう前提に基づいていた。改正旅行業法は、今の時代は「エージェント(代理業)」という発想ではなくて、自ら付加価値のある企画をして自らが商品を作って、それで新しい需要を創り出すためにマーケットに売り出すのが旅行会杜の主な仕事だと、法的な位置付けを変えた意味が非常に大きい。もう一つは、お客さまのリスクも当然あるということで、旅行会社が負う責任とお客さまが負う責任を明確にしたこと。新しい時代の旅行業の有り方を消費者との関係でも定義をした。この二つが大きなポイントだ。

【二階】
 今、旅行のパンフレットは旅行会社の店頭や駅などにたくさん置いてくれてあって、これを一つもらってくれば旅行会社に頼まなくても自分で旅館・ホテルが予約できる。旅行業界は大変な時代に入ってきた。しかし、今日ぐらい「旅行」「観光」といって世の中が関心を持ってくれる時代はない。量は大きく増えたわけだから、旅行業界はこの中からどれだけのお客さまを確保できるかの知恵比べの競争の時代に入った。私は旅行業界の皆さんに「プロなのだから、プロらしくやろう」と話している。料理だって「さすがここは違う」という料理を出して初めて客からお金をもらえる。観光業には、まだ素材はいっぱいある。

【新町】
 旅行会社としては深刻な問題だ。今まではお客さまは旅行に関する情報がなく、旅行会社にどうしても頼らざるを得なかった。最近の消費者は勉強していて自分でなんでもやってしまう。しかもインターネットを活用した新しい形の流通業が入ってくると、従来のビジネスパターンは通用しなくなる。個々の会社としてどうあるべきかというビジネスモデルを変えていかなければならない。人の面でも、どちらかというとお客さまの方がより詳しく知っていて、対応する旅行会社の営業担当者とかカウンターの社員がそこまでキャッチアップできていない。そこでJATAではANTAとTCSA(日本添乗サービス協会)とで協議会を創設し、「デスティネーション・コンサルタント」というコンサルテーションするプロを育成する新制度をスタートさせた。インターネットで受講して、ある一定の水準に達すればディプロマがもらえるという人材育成の制度だ。

 ―JATAでのこれからの事業の大きな柱は。

【新町】
 海外旅行者数を二〇〇〇万人に引き上げることに関して、旅行会社だけでなく、政府観光局や航空会社もすごく乗り気になってきた。そこで、二〇〇〇万人の中身についてもっと細分化して、ではアメリカはどうする、アジアはどうする、アジアの中でもシンガポールはどうする、香港はどうするという国別のターゲットを積み上げて、具体的な施策をやろうと計画している。

【二階】
 外国との観光交流は、インドなら日本からインドへ年間何人ぐらい行く、インドから日本へ何人ぐらい来てもらう、またミャンマーなら何人と、観光業界だけではなくて国全体でだいたいの目標数値を決めて、協力し合うことが大事だ。

【新町】
 それと今、JATAで大きな議論になっているのは国内旅行をどうさらに振興するかということ。旅行会社として「今のままで行ったら大変だ」と問題意識は持っているが、いろいろなしがらみもあるのか、なかなか本音の議論が出てこない。旅館の立場もあるだろう、あるいは観光地の言い分、旅行会社の言い分、あるいは地方自治体の言い分もあると思う。一回本音の話をする場を設けて、国内旅行をどう振興するべきか考えるべきだ。


 ―ANTAでの課題は。

中国、韓国と日本とで
トライアングルの旅行を

【二階】
 昨年、中国・大連でのアカシア祭りにANTAは六〇〇人を送客した。二万人の観客のうち海外からは六〇〇〇人。団体観光客を一番多く集めたのがANTAだった。そうすると六〇〇人の一緒に来られたお客さまも、小さい旅行会社だと思っていたが、海外旅行だってやれる、しかも、綿密な計画で立派なことをすると見直す。見直されれば旅行業者も海外旅行にさらに自信を持ってくる。また、これはJATAと一緒に取り組まなければならないが、これから中国と韓国と日本とでトライアングルの旅行を進めていこうと考えている。アジアのリーダー三カ国が時計回りでもその逆でもいいから三角形で観光客を回せばインバウンドで日本も一〇〇〇万人を達成することも遠くはない。最初は三角形でスタートするが、台湾とかベトナムとかを周りに加え、だんだん丸の形に仕上げていってもいい。そういったことで、ANTAは今年、思いきって海外旅行の面にも活路を拓いていきたい。
 もう一つ、例えば、浜松での「花の博覧会」にはANTAもANTAなりに努力して、現地で理事会を開くなど対応した。新潟で地震が起これば、観光の再起のため私も共に激励に行った。以前、沖縄で修学旅行客がガタンと減った時もそう。あるいは祝日三連休の法律を作る場合も、全国各地に点在する私ども業界のメンバーの力で法案成立へのキャンペーンなどを展開した。ANTAは、会員一人ひとりはまだ小さいかもしれないが、全部合わせると六〇〇〇社ある。この数の力をどう生かしていくかがこれからの課題だ。
 新町会長のご配慮もあって、今、JATAとANTAとが、競争するところは競争し、協力し合うところは大いに協力するという円満な関係になっている。新潟県中越地震で、いち早く両団体が協力して応援に行ったことも、画期的なことだ。実は、将来、本部ビルを新しく共同で建築してはどうかと内々で新町会長と話をしている。そうすると、そのビルには外国のエージェントや航空会社も入るだろうし、外国の料理を楽しめるレストランもできるかもしれない。

【新町】
 そう、オール日本の観光会館みたいにしてはどうかという話がある。

【二階】
 JATAのみなさんと、私たちANTAのグループとが話し合いができる関係を持たせていただけることはたいへんうれしいことだ。

 ―国内旅行の活性化のために、観光業界としては何をすべきか。

【新町】
 国内旅行は日本人の旅行者が増えないから、アジアからのインバウンドを増やそうという向きもあるが、それは大間違い。VJCだけでは救えない。日本の人々が本当にエンジョイするような国内旅行になっていかないと、国内の観光基盤はますます落ち込んでいく。その被害が旅館だとかに波及して、地域の経済がだめになり、雇用もおかしくなり、大変な問題になる。
 最近、国内旅行を見ていると、バス旅行だとか非常に安い旅行に参加しているのはほとんどシニアだ。若い人は全然動いていない。今の問題は、シニアばかり対象にしていること。旅行会社もそうだし、車の販売もそう。若い人たちにどれだけ活力を与えるマーケティングをするかという視点が欠けてしまっている。確かに構造的な問題もあるが、旅館、観光地側ももう少し自分たちの街作りというものを真剣に考えなければならない。黒川温泉は若い人たちがどんどん行ってブームになっているわけだし、由布院もしかり。湯治場だったらいいが、シニアだけが行っているような観光地に活性化は期待できない。若い人たちを引きつける観光デスティネーションにならないと。

 ―安売り競争のなか、旅館も経営が苦しく、廃業するところもある。

【新町】
 私のイメージの中にある旅館は、高層ビルで百室もあるというものではない。旅館の良さは、女将さんが居てアットホームなサービスが受けられること。鉄筋コンクリートのビルを建てて、投資をして大きくしたら、いわゆる伝統的な旅館ではなくなってしまう。旅館は日本の誇るべき伝統であり、維持するべきだが、今「ザ・旅館」と言うべきものが非常に数が少なくなっている。


【二階】
 私の旅館ではこういう伝統を守っていくという、自分の主張がないとだめだ。だから、このごろは「うちは五部屋で、これ以上の客は取らない」というような旅館が受けていて、そう言われると、みんな行ってみたくなる。一日の売り上げと利益率を考えていれば、堅実に儲けてやっていける。けれども、ある程度大きな旅館は、お客さまが来ないからといって、どんどん安い客を入れる。それで、お祭りは毎晩のようにやっているにもかかわらず、経営的には火の車という状況になる。
 創意工夫というか、先日テレビで石川県中島町の「中島菜」という地域の伝統的な野菜が健康によいということで、大変な人気を呼んでいたと伝えていた。菜っ葉一つでも町おこしにつながるお手本で、観光分野でも「中島菜」を育てたいものだ。

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