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東名を走るたびに想い起す

中曽根 康弘

 遠藤三郎さんが逝かれてから早いもので、すでに十五年の歳月が流れました。先般は、遠藤さんの生前のご功績を讃えて郷里の静岡県裾野市に銅像が建立されましたが、さらに今回、故人を偲ぶよすがとして追悼集を編もうということになりました。私はご縁のあった多くの方々によって描き出された生前の遠藤三郎像なるものを拝見しまして、あらためて政治家遠藤さんの人となり、そしてその卓越した識見と政治活動に対し敬意を表す次第であります。
 遠藤さんは、農林省の高級官僚から政界に転じられた方ですが、いわゆる官僚臭さのない人であり、いつも国民の側に立って政治を進めるという姿勢を貫いておられました。そして、農政、国土開発などの多岐にわたる政策の推進に、豊富な見識と果敢な実行力を発揮されました。戟前の農林省の役人時代には食管法を作って、戦中戦後の我が国の食糧政策に大きく貢献されました。また今日のモータリゼーション時代を先取りした東名高速道路の建設については、自ら建設促進議員連盟の会長として努力され、議員立法によってこれを実現させたのであり、私は今もこのハイウェイを走るたびに遠藤さんのことを想い起こすのであります。
 遠藤さんは霊峰富士を仰ぎ見る温暖な風土のもとで青くまれた柔和な物腰と静かな口調で人に接しながらも、その説くところは、きわめて鋭く、情熱的でありました。しかも政策論でも、党務についての話し合いでも、常に正攻法でのぞまれ、また責任感の強い方だったので、与野党の誰からも信頼されておりました。亡くなられて十五年を経た今日、遠藤さんの政治的盟友、江崎真澄代議士を委員長とする銅像建立委員会の多くの方々の手によって、記念の銅像が立派に建立されたというのは、まさに遠藤さんの功績と人柄を示すものであります。
 この長寿の時代に、六十七歳のご逝去はあまりにも早すぎました。もっと政界にあって国政に尽力して頂きたかったと残念でなりません。
 あらためて遠藤さんのご冥福をお祈り申しあげます。

                                (元内閣総理大臣)

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