【2011年5月12日 日刊建設工業新聞  「建設放談」】

津波対策推進法制定をこれ以上延ばしてはならぬ
与野党協力して早期成立ははかるべし
政治評論家 森田実

「行を省みる者は其の過ちを引かず」(晏嬰)

 自らの行為について反省を怠らない者は同じ過ちを繰り返すことはない。とくに政治指導者は常に自らの行為を謙虚に反省し、過ちを重ねないようにしなければならない。ところが、ある種の政治家の辞書には「反省」という言葉がない。ただただアニマルのごとく、自己の利益をむさぼるタイプの政治家が目立つようになってきている。政治の著しい退化とみなさなければならない。政治は、このことを厳しく反省しなければならぬ。
 昨年(平成22年)6月11日に二階俊博元経済産業大臣ら自由民主党と公明党の衆議院議員有志が、議員立法として提出した「津波対策推進に関する法律」(案)は、まったく審議されず、継続審議となったまま今日に至っている。原因は、衆院で絶対多数を有する与党民主党の無理解、鈍感さにあるのではなかろうか。
津波に関して少しでも知恵がある国会議員なら、津波の危機が日本列島に迫りつつあり、いつ起こるかわからないような緊迫した状況にあることは、わかっているはずである。
 津波対策推進法案の発案者である二階俊博氏が、津波対策の立法化の必要性を痛感したのは、昨年2月末、チリ地震にともなう津波が日本を襲うかもしれないという日に、和歌山県下で街頭演説を行っていた時だと言う。二階氏は語る。
《このとき、私は、津波対策推進を法律によって行う必要がある、と強く感じた。法律の制定によって津波に対する国民の関心を高め、津波の襲来に備えなければ、多くの国民の生命が危険にさらされるおそれ大である。和歌山には「稲むらの火」の体験がある。稲むらの火によって村民の生命が救われた
11月5日を「津波の日」として制定し、津波教育の徹底をはかるとともに、ハザードマップの整備や避難場所の設定等、行政機関が津波に備えるべきだと考え、同志に相談して6月11日に議員立法として提出した》
 歴史に「もし」はないが、国会がこの法案を直ちに審議し成立させていたら、昨年(平成22年)11月5日の「津波デー」には、国民的に津波を議論し津波から自らの生命を守る方法を広く伝えることができたであろう。行政機関も中央、地方を通じて対策を立てたであろう。そういうことが行われていれば、今年(平成23年)の3月11日の巨大津波の襲来にも多くの生命を守ることができたかもしれないと思うと、残念でならないのである。
 この点について、津波対策推進法案に無関心だった国会議員とくに管首相ら政府・与党の議員は、厳しく自らの行為を反省してほしいと思う。
 私がとくに残念に思うのは、今年の3月11日の巨大津波による大災害のあとにおいても、国会審議が始まらなかったことだ。とくに、政府・民主党が鈍感だ。私は政治家のこの鈍感さを厳しく批判し、二階氏らの津波議連の活動を支持するとともに何人かの民主党幹部に書状をしたためて、早期に国会審議開始を強く陳情した。
 管首相が、浜岡原子力発電所の操業停止を求めたのは、近い将来、東海地震が起こる確率がきわめて高いとの判断にもとづいている。それは津波発生の危険があるとみている結果である。
 しかし、それでもなお津波対策推進法案の審議を始めていない。どうしたことか!
 この間、二階俊博議員らは、民主党幹部を訪ね、時には民主党の「つなみ対策ワーキングチーム」にも出席して、早期の審議入りを訴え続けた。二階氏は、「津波対策には与党も野党もありません。民主党からの修正要求があればどんどん出してください。超党派で津波対策に取り組みましょう」と後輩の若い民主党議員に向かっても訴え続けた。
 民主党の議員緒兄姉に訴えます。いまは津波対策に関する法律はないのです。国、地方自治体挙げて津波対策に取り組むため、津波対策推進法案の審議を始め、法制化を早く行ってください。これ以上、法案審議をサボタージュするのは罪悪です。災害はいつ起こるかわからないのです。真面目に津波対策に取り組んでください。
 二階氏は私に「近々、審議を始めることが出来ると思います」と力強く語った。二階氏の忍耐強いご努力に敬意を表する。いまや、国家の一大事である。ここにおいて、与党民主党と野党第一党の自由民主党が理性を持って歩み寄り、与野党の垣根を乗り越えて、国難打開のため協力し、歴史に残る津波対策法を早期に成立させることを強く望む。

 

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