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インタビュー この人に聞く

<月刊 官界G2004 August No.346>より

「9342キロ建設は当たり前のこと」

 

小泉総理、独り善がりを止めよ!

−通常国会が昨日(六月十六日)終わりました。今国会は重要法案が非常にたくさんあった割にはあまり議論が深まらなかったのではないかという批判が強いですね。振り返って総括してみると、どういう国会だったでしょうか。

二階 現在、年金の問題と、イラクのいわゆる多国籍軍への自衛隊の参加問題がクローズアップされていますが、地味な重要な法案もたくさんあったわけです。それにしては、与野党で議論をする時間が誠に少なかったことは事実でしょう。これはやはり、改めなければならないことだと思っています。
 道路四公団民営化の法案は、審議に八十時間以上費やしているわけですから、国民を代表してあらゆる立場の方の意見を代弁するとすれば、やはりこれくらいの時間は必要なわけです。定例日というのを決めて、頑なというか、杓子定規な議会運営を相も変わらずやっていますが、私はあんな定例日などは必要ないと思いますね。必要なら、土曜も日曜もやる、夜もやるということの方が国民の皆さんは望んでいる筈で、本来は野党がそれを主張すべきなのです。野党がもっと、質疑時間をたくさん取れるように工夫すべきで、時代過れの牛歩などをして自分たちだけが満足しているようなことでは、これはもう政府や与党の思う壷ですよ。議論の引き延ばし戦術も拙い、幼稚というか、残念でした。

−道路公団の話が出ましたが、この法案ほど評価が分かれているものはないのではありませんか。民営化を推進してきた猪瀬直樹さんは「六十点は取れている」と胸を張っているのですが、世間的には完全骨抜き、族議員によって空洞化されたという評価の方が強いですね。

二階 そもそも、道路関連四公団の民営化推進委員会の意見はやがて法案として国会に提出することになるわけですから、官邸も含めて、独り善がりのような意見を議論しているだけではなくて、広く多くの皆さんのご理解を得られる努力をするべきだったのです。少なくとも委員の人選くらいは、与党と相談するとか、あるいは国会の承認を得るとか、そういう手順も当然慎重にやるべきでしたが、そこのところを全部すっとばしてスタートしたわけです。
 ですから、ある意味では官邸の好みで選んだような、そういうきらいもありましたから、最初のスタートの時点から、私はこの委員会の終着は容易なことではないなと危惧を抱いていました。案の定、委員会が分裂して意見書も支離滅裂になってしまったでしょう。委員長が途中でいなくなるような委員会なんて、未だかってないのではないですか。しかも、極めて重要な委員会でですよ。
 そして委員長が、途中で政府からもらった資料に基づいて、小説に書いて発表する。あちらからも発表する、こちらからも発表する。ルール違反とは言いませんが、少しおかしいのではありませんか。政府の委員であるという職責を利用して、いろいろな資料を政府からどんどん出させた。道路公団からも。必要に応じては県からも。それに基づいて本を書いて、一般に発売するということなんか、過去には聞いたことがないでしょう。
 委員になった人が、委員会の内情を暴露したものをどんどん外部に発表したり、テレビで喋りまくったりするというようなことは、未だかってないことなのですよ。それよりも、そういうことをする暇があれば、もっと地方を歩き、そして道路が渋滞しているところなどを見分されたらどうでしょう。問題を打開していくためにはどうしていくか、中国の高速道路はどうかとか、アメリカのハイウェイはどうなっているか、ドイツのアウトバーンはどうなっているかというようなことを、改めて勉強し直す方が、よほど大事なことではないでしょうか。
 皆さんそれぞれが自分より偉いものはないというような調子でやったでしょう。だから、結果は尻すぼみみたいになってしまって、自分たちもトーンダウンしているのではないですか。

−今では、国の整備計画「九三四二キロ」が建設されるということについて、ほとんどの人が疑っていないでしょう。

二階 そんなことは当たり前のことで、それぞれの地域が四十年も待っているわけですよ。高速道路の問題が始まって以来、この長い期間、東名高速道路とか、東京から大阪、あるいは九州に伸びていく道路、東北の道路、日本の背筋に当たる部分はほとんど全部完成しているわけです。その間、それ以外の地域はじっと待っていたわけですよ、順番が来るのを。その順番がようやくやってきたと思ったら、無駄な道路はやめておけなどと言われてしまう。無駄な道路なんてほとんどありませんよ。それを荒唐無稽に、地方の無駄な道路はやめておけなんて、正義の味方みたいに言うのは、これはとんでもないことですよ。

−最近は、すべて民営化して採算が取れるか取れないかというその一点で、物事を判断していこうという傾向があるようですね。採算が取れないものはだめで悪いものだと…。

二階 高速道路の借金ということで大騒ぎしますが、今よりもっと財政の乏しかった時代、高速道路の問題が始まった頃の財政というのは、今と比較しようもない状況でした。世界銀行から金を借りて造ったものですから、高速道路の料金が一キロいくらということを決めるところまで、世界銀行に申請して許可が要ったわけです。
 私は若い頃、東名高速道路建設の先頭に立っておられた遠藤三郎元建設大臣の秘書をやっていましたが、初めて富士川周辺で高速道路を使い始めた時に、料金を少しまけてもらえないだろうかという陳情がありましたよ。私は代議士と相談して、当時の尾之内さんという道路局長に掛け合ったことがあります。「趣旨はわかるが、何分世界銀行から金を借りる際にキロいくらということまで申請して認可をもらって出発しているので、これは建設省だけの判断で値段を下げるというわけにはいかない」というのが局長の答でした。
 ところがしばらくすると、富士川の周辺ですから、富士山の火山灰のような砂利をトラックで運ぶわけですが、今までは普通の道路、一般道路を走っていると、渋滞で一日に何回も行けなかったのですが、高速道路のお蔭で何回も往復できるようになったわけです。そこで売り上げがどんどん増えるものですから、料金をまけてくれと言った話はもう結構です、取り下げますと言って来られたことを覚えています。高速道路建設当初、多くの関係者が、世銀との交渉などに言葉も十分に通じない時代に、大変な苦労をされたわけです。
 財政の問題は、将来にわたって解決されていかなければならないことは、これは当然のことですが、日本の国が四十兆円くらいの借金をしているからといって潰れるわけではないのです。この借金の部分だけで上へ下への騒ぎをするような問題ではないのです。もっと落ち着いて広い視野で考えるべきことではないでしょうか。
 その証拠に、地方の道路でもちゃんと黒字ですよ。そんなに心配してもらわなくても。だから、この道路公団問題は、これからよい方向に行くのではないですか。しかし、道路公団の、この高速道路の問題について、国民的に皆で見直し、考え直す、そういう反省の機会となったことはまちがいないわけで、関係者の皆さんのご努力は評価したいと思います。

−法律ができましたので、今までと同じものを造るとしても、造り方などは変わっていくわけですね。

二階 そうです。もっと創意工夫をしていくべきだと思います。それから、もっと早く作らなければ。二十年も三十年もかかって道路を造るというのでは、できあがった頃には当初の関係者はこの世にいなくなっていますよ。ですから、中国などは後から出てきて、日本をはるかに追い越しています。もう総延長三万キロに近いのです。三万キロを越えたとかいう話ですよ。それに比べて、わがほうはまだ七千キロちょっとでもたもたしているわけです。もっとこれを速いスピードでやって、効果を上げるということに知恵を出さなければ国際競争にも勝てない。
 ですから、民営化をやったことによって、民問の知恵というか、民間の経営センスを取り入れてやるということは、これは大事なことだと思うのです。今までの道路公団のようなああいうシステム、制度では、中央官庁よりもまだ官僚的になっている部分が、なかったとは言えないでしょう。そういう意味で、いろいろな工夫を凝らすということに、好むと好まざるにかかわらず、その方向に行くということになりました。私は大いに、これは評価すべきことだと思っています。 

「年金」はもっと国民の理解を得る努力を

−通常国会後半の最大のテーマのひとつだった年金。これは参議院選挙の最大の争点でもあります。とりあえず制度改革法は成立しましたが、いろいろな世論調査を見ると、議論が十分ではないという声がたくさんあるのと同時に、法律ができあがった後に出生率の低い数字が出てきたり、いろいろな問題が噴出しています。これでは年金に対して皆が安心するというところまでいかないと思うのです。民主党も含めて年金一元化の前には一度合意が成立しましたが、制度改革法成立に当たっての民主党との関係でいけば、これは事実上、ご破算になってしまった。今後、一元化問題というのはどういうふうに取り扱っていかれるのでしょうか。与党だけで進めていくのですか。それとも、もう一度、野党との話し合いの動きが出てくるのでしょうか。

二階 これは国会対策上の問題だと思いますが、やはり与党が責任を持って、「これならば大丈夫」というか、自信のある案を作って、野党に提示する。そして、野党にさらによい意見があれば、それは取り入れていくという姿勢が大切ではないでしょうか。年金のことですから、一方的に押しまくるやり方ではなくて、広く多くの国民の意見を聞くということが大事なことだと思うのです。今の民主党と一緒になって、自・公・民でひとつの法案を作るということができれば、それは国会運営は楽でしょうが、そんなにうまくいかないのではないでしょうか。
 機を見て内閣不信任案を出そうと構えている野党と、政肘与党とがうまくいくわけがないので、私は三党合意などというのは、そんなものがいつまでもつのかなと思って見ていましたが、事実上ご破算も同じです。ですから、この年金問題で内閣を倒そうという勢力と、年金問題を三党でうまくこなしていこうという勢力が、一緒にテーブルについて協議しても、その結論ははじめからうまい結論になるわけがないと思います。
 ですから、これは年金を納める国民の皆さんが納得できる、将来の不安感がない、将来に楽しみというか、こうしておけば将来は安定するだろうという自信が持てるような案を、早く提示すべきだと思うのです。そして、国会議員のみならず、多くの国民の中にも、事情があって、いろいろな理由によって未納になっている方もたくさんおられると思うのです。故意に納めなかった人は別として、普通の人は「うっかりした」とか「知らなかった」とか、「請求がなかった」とか言われるわけですが、私はそういう人が皆、年金を追加して納めることができるような道を開いていくべきではないかと思っています。そうすればそれも年金の財源となるわけですから。そして、皆がすっきりする。国民の皆さんの不満や不信感を少しでもぬぐい去っていくということが大事だと思うのです。
 年金を納める人は、納める時には少なく納めて、もらえるものはたくさんもらうほうがよいに決まっているわけです。ただ、そんなにうまくいく方法はありませんね。これは野党といえどもそんな案があったら教えてもらいたいですけれど、そんなことはあり得ない。ならば、どのへんでお互いが譲り合うか、我慢するか、理解し合うかということですから、これは数字でちゃんと出るわけですから、積極的に国民世論を巻き込んで、一緒になってよい案を作っていくという努力をすべきだと思います。
 年金の専門家も多いわけですから、もっと国民の理解を得られるような努力を、日頃からやるべきだと思うのです。なにも、国会開会中でなければできないことではないのですから。

−ただ、いったん法律が成立しましたから、選挙でそれなりの結果が出ると、敢えてもう一度一元化の話を出して、国会を大変にすることもないということで、これで終わりになってしまうのではないかという懸念も国民の間にあるのですが。

二階 年金に頼るというか、年金を老後の生活の柱に据えてお考えになっておられる方は、ずいぶん多くおられるわけです。ですから、年金の問題はやはりもう少し議論をして、きちんとしておくことが必要です。見直すことがあれば、見直していけばいいわけですから。
 参議院選挙の結果によって、どういうふうになるかわかりませんが、「もうこれでおしまいだ」ということには、ならないのではないですか。年金と介
護の問題、医療の問題、全て連動しているわけですから、私はこの議論はずっとしていく必要があると思いますね。そして、国民の理解と納得を得る努力をしていくということが大事だと思うのです。
 年金の問題でもたもたして、お互いにこの問題が胸につかえていると、他の重要課題を進めていく上において、国民の理解を得ることにずいぶん遠回りしていかなければいけないでしょう。
 それならば、私はもっと性根を据えてやったほうがいいのではないかと思います。

−もうひとつ、国会のテーマになったイラク問題についてお伺いします。自衛隊のイラク復興人道支援の成果というものをどういうふうに見ていますか。

二階 国際社会と協調して、特に日米同盟を主軸として、日本が協力できることはできるだけ積極的に協力していくことが重要ではないでしょうか。そして、イラクに跋扈する無法者をなんとか征伐する、そういうことで取り組んだことに、われわれは全面的に賛意を表して、今日まで協力してきたわけです。もちろん、その国の生い立ち、歴史がありますから、一本調子で何もかも解決するというわけではない。それは、イラクでこれだけてこずっている姿を見ていればわかるわけです。日本としては、国際社会が協調して復興支援に立ち向かうということでは、かなり積極的に進めたというか、取り組んだことになるのではないでしょうか。
 先の湾岸戦争の際には、地雷の除去などを一所懸命にやりましたし、難民の輸送問題などをやった実績がありますが、今度はもう少し踏み込んでやったというか、そういう自信を持つに至ったのではないですか。

−今度はまたそれが少し変わって、国連安保理決議1546を受けて多国籍軍への参加という話になっています。一番、批判を受けているのは、手続き的な問題として、国会もちろん与党に諮る前に総理大臣がアメリカの大統領に方針を伝えてしまったということだと思います。

二階 ああいうサミットだの、日米首脳会議だのという大舞台になると、やっぱりかなり高揚してくるのでしょうね、小泉総理も。ですから、理解できないことはないのですが、手続き的なことはきっちりしておくべきだったというか、しておいた方がよかったと思います。
 イラクの問題はこれからどこまで続いていくのかわからない、どこまで長引いていくのかわからないことでしょう。さらに怪我人や犠牲者も出ないとは限らない。そういう問題の際に、首脳会議の席でアメリカからの要請を受けて、直ちにそれに対して答えるというのは、これは一面、アメリカとしてはこんな嬉しいことはなかったでしょうが、やはりそこは慎重であってもよかったのではないでしょうか。外国の大統領たちとお話していると、総理も大統領になったような気分で対応してしまったのでしょう。今後もこういうことは起こりうると思うのです。私は今後は、もっと慎重に、まずは国会に持ち帰って十分に議論して、それならよかろう、さらに国民の理解を得ながら協力しようという姿勢が大事だと思います。

−ただ、もう通常国会は終わってしまいましたし、政府としては法改正は必要ない、四原則でいけるということを言っています。法改正が要るかどうかは別にしても、選挙が終われば臨時国会を召集してもいいわけですし、手立てとしてはあると思うのですが、そういう意味で国会の何らかのチェックを受ける努力を、たとえ後であってもするべきではないかと思うのですが。

二階 国民の皆さんの間にも、そういう声があることは事実ですから、これからはやはり慎重であってもらいたいと思っています。

ポスト小泉−「風」は自分で起こさないとダメ

−今の手続きの話から、最近の小泉総理の政局運営が、独り勝ちを続けているということもあるのかもしれませんが、だんだん荒っぽくなってきたのではありませんか。手続きをかなり省略する。今までのルールがすべて正しいとは限りませんが、無視する。それから、国会でも答弁などでまともに答えないというか、紋切り型の答弁しかしなくて、「そんなものは答える必要がない」というような、ないしは茶化したような答えをして終わらせてしまうという場面が多いです。それが逆にといいますか、さらに蔓延して閣僚たちの失言などにもつながっているのではないかというような声も出ていますね。小泉総理の最近の政治手法をどうご覧になりますか。

二階 ずっと高い支持率が続いてきましたから、自信に満ちてリーダーシップを発揮しておられる。私はこれは大変に結構なことであると思うのですが、今のように国会での答弁が変わってきたなどと言われることは、やはり追及する方の野党にも大いに責任があると思うのです。
 そうした答弁、そう思われるような答弁であった場合、直ちに再質問して、そして総理の考え方はこれでいいのかという突っ込みがなければならないでしょう。今はそれがなくて終わってしまうわけですよ。わいわい言って終わってしまうわけです。野党がやる気になればできるのですよ。「もう一日質問させてくれれば、明日は採決に入る」ということになれば、一日でも二日でもテレビを入れてやっていいわけですよ。それを今は、野党が弱いから小泉さんペースになっちゃっている。野党にもうひとつ元気がないですね。

−小泉総理自身は、最初のころと比べて、政治手法そのものは変わっていないと……。

二階 まあ、あまり変わっていないと思うのですが。やはり重要な案件については、国会審議で慎重であっていただきたいと思います。

−以前の政権を見ると、たとえば小渕恵三総理がそうでしたが、党内の各派のバランスなどにものすごく気を配ってやってきた。小泉さんになってからは、内閣改造で一内閣一閣僚とか、民間を使うのもそれでいいのですが、たとえば安部晋三幹事長を起用して総幹分離の原則を外れてみたりとか、新たに当選した新人をどんどん自分の出身派閥に入れたりしている。小泉総理自身は今は派閥を離れていますが、あまりにも総理だけではなくて総理・総裁派閥全体が、少し横暴に過ぎないかという意見を言う人が自民党の中にもいるようですね。

二階 まあ、評論家的に言わせていただければ、やはり往年の田中派よりもしっかりしていますね。やり過ぎというほどやっておられるのではないですか。(笑)

−やはりそうお感じですか。九月に内閣改造があるとご覧になっていますか。参議院選挙に勝てばと言う前提ですが。

二階 選挙に勝ってからのことでしょうが、もう相当に時間も経っていますから、この辺で政権にさらに浮力を付けていくために、内閣改造というのは当然考えておられるでしょうし、総理も記者会見で内閣改造について言及されているようですから、それは閣僚を取り替えることも当然考えているのではないですか。

−参議院選挙後は、小泉さんの総裁任期の残りがだんだん見えてくるわけですし、衆議院はいつでも解散ということがありますが、主要な選挙はとりあえず終わったという形になります。そうなると、過去の例では政権がレイムダック化してきて、党内に次の総裁を巡っていわゆる権力闘争が始まるというのが、これまでの長い間の自民党の歴史だったのですが、今見ている限りでは、なんとなく党内にあまり元気がないので、そういうことが起きていくとは思えないですね。

二階 よく「べた凪状態」と言われるが、まったく凪ですね。党内は。

−では皆さん小泉さんの任期が終わるまで、じつと待っているということですか。

二階 どうですかね。私も自民党に戻ってからまだ日が浅いですから、あまり深く関わらないようにしているわけですが……。そういう政局の周期みたいなものはありますからね。当然、またざわついてくるでしょう。

−ポスト小泉がいないと言われ続けています。それが「べた凪」ということになっているわけですが、ポスト小泉は本当にいないのでしょうか。

二階 いないことはないでしょう。今は小泉さんが総理で、すべての権限を集中して持っておられるから、一頭地抜きん出ていることは事実ですが、また過当な方が選ばれれば、それなりに大いに活躍されるでしょうからね。私は党内に全く人材がいないとは思いません。

−二階さんはかつて竹下派にいらしたわけですが、今は特に竹下派の流れを汲む偉大派閥・橋本派が「元気がない」「ばらばらだ」という評価を受けています。外からご覧になっていかがですか。

二階 派閥というのは、総裁候補を持たなければやはり活力が出ないのです。今の橋本派に総裁候補がいないとは言いませんが……。田中(角栄)先生や竹下(登)先生の総裁の座を巡っての努力は、それは大変なものでしたね。そういうことからすると、今は新聞の論調や世間の風を、皆が名人芸のように一所懸命に読んでいるわけですが、やはり風は自分で起こさないとだめですよ。

−昨年の衆議院選挙で二大政党制が近づいたと言われました。参議院選挙の結果がどうなるかわかりませんが、流れとしては二大政党制にある程度向かっていくのでしょうか。それとも、いずれどこかで政界再編という形になるのでしょうか。

二階 二大政党制ということは、理想として言われてきていますし、現にイギリスやアメリカのような例を見ると、二大政党で政権交代を容易にするということは、うたい文句としては正しいと思います。ただ、今の日本のこの実情の中で、二大政党で政権交代がスムーズに移行するということは、そう簡単なものではないと思いますね。
 例えば、二大政党が実現したら、共産党はどこに位置されるのか。民主党が二大政党を目指す場合に、共産党と一緒に行動するのですか。そういうことに関して、誰も明確に言わないでしょう。テレビ討論会でも、国会の投票の賛否の状況を見ていても、二大政党の徴候が現われたとはとても思えないではないですか。ですから、ちょっとまだ、日本が二大政党にいくのは難しい。むしろ、政界再編の方が可能性はあるというふうに思います。

観光立国実現には良好な首脳外交再開が急務

−二階さんは昔から「観光立国」を主張されてきました。去年、小泉総理が政策として打ち上げてもう一年経つのですが、何か具体的な成果があったかというと、あまり変わらないように見えます。二階さんが前から指摘している中国のビザの問題も、具体的に進んだという感じはないのですが。

二階 「観光立国」の掛け声というか、旗振り役を小泉総理自身がおやりいただいたことによって、観光立国の方向へ向けて皆でがんばろうという空気は、観光関連業界にも出てきています。また、自民党の中にも、そういう気運があることは事実ですから、私はこれは大変に評価したいと思います。おっしゃるように観光が本当に軌道に乗ってくる、あるいは国際社会の中で、日本の観光というものをどのような位置付けをしていくかというのは、まだまだこれからだと思います。
 そこで、中国の団体観光客のビザの問題ですが、日中関係はこれからもお互いに避けて通れない間柄であるわけですし、歴史的には紛れもない事実というか、両国の深いつながりがあったわけですから、多少不幸な時代があったとしても、日本と中国との関係というのは、もうお互いに引越しはできないわけです。その巨大な国がすぐそばにあって、日本に観光で来たいという人たちがたくさんおられるわけです。ここをガードしておくという手はないわけですから、ようやく政府と自民党の間でも意見がまとまってきましたので、今は中国と詰めの作業をしています。
 というのは、日本に来る場合に、旅行代理店などを中国でも日本でも指定しているわけです。これなどをどのような形にするのか。そういう事務的な、細かい点で今に折り合いがつくと思います。これによって近く北京で日本の阿南大便と中国の何光暐観光大臣との
間で会談が行われますが、必ず決着するだろうと思っています。四省一市(江蘇省、漸江省、山東省、遼寧省、天津市)の住民にも新たに団体観光のビザが発給されるのです。それができて、後に特段の問題がなければ、この次は中国全土に及ぼそうというわけです。
 よく犯罪者とか不法滞在者のことが言われますが、犯罪者や不法滞在者と観光に来る人とは全く別です。観光客をつかまえて、泥棒か不法滞在者のように言うのは、これは大まちがいで、ここのところは頭を切り替えないとだめです。そして、お互いに相互交流していくことによって、戦争を回避したり、歴史問題の解決につなげていったりしなければいけません。
 もうひとつ、私は今、自民党の観光特別委員会の中に「国際修学旅行に関する小委員会」を設けて、活発な議論の結果、結論を得たわけですが、これは総理も大賛成してくださっています。できるだけ若い時代に世界を見ておくことは大変に大事なことですし、お互いに相手の国を知るためにも、日本の子供たちには、特にアジアの各国を訪問してもらいたい。アジアの子供たちにも日本を訪問してもらう。そして、ホームステイなどを通じて皆が相手の国に対する尊敬の念を持つ、理解するということが大事だと思うのです。
 このことに関して、経済的な面で海外旅行にやるのは大変だという家庭に対しては、育英資金のような形で修学旅行の費用を、先に修学旅行に参加しておいて、卒業してからローンを払うというようなことにしてもいいのではないかということです。総理も大いに結構だという考えのようですから、これを進めていきたいと思っています。
 それから、中国だけのことで言えば、この八月二十日頃にJNTO(独立行政法人国際観光振興機構)の上海事務所がオープンします。ですから、そういうことで着々と手を打っているということです。総理の提唱される訪日外国人観光客、年間一千万人くらいを迎えるということは、不可能ではないと思っています。

−今は日米は非常にうまくいっているのですが、日中ということになると、特に政治家でいうと、二階さんのような方が昔に比べると少ないのではないでしょうか。日中の政治のパイプは細くなって、現実問題として総理大臣が行っていないという状態が続いているということで、日中関係というのはもうひとつ、日米と比べると足踏み状態が続いているように見えるのですが、そのへんはいかがでしょうか。

二階 外交というのは、国民レベルの外交、議員レベルの外交、通商問題でお互いに貿易を盛んにしていくということ、スポーツ・文化の交流等も大事だと思うのです。しかし、何よりも大事なことは、首脳外交です。ですから、トップとトップが、常にいろいろな場を通して話し合うということが大事ですから、総理もできるだけ早い機会に訪中される、あるいは中国の首脳部に日本にお出で願うとか、そういうことができる環境を整えていくことが大事でしょう。私は、やる気になったらできると思います、やろうと思えば。

−ただ、毎年、総理が靖国神社に行くとしばらく日中間のムードが悪くなるということの繰り返しですね。

二階 そうですね。もう少しアジアの国々の人たちがそのことによって心を痛めるとするならば、どんな形にすればお互いに理解し合えるのか考えるべきではないでしょうか。私は、努力をしてみる必要があるし、その価価は十分にあることだと思うのです。「内政干渉するな」「日本の総理が靖国神社に参るのがどこが悪いか」と、これを繰り返しているだけでは、円満な外交というわけにはいきませんからね。ですから、そこはもっと努力する必要があると思います。我々は我々で、自分の範
囲で可能なかぎりの友好を築いていくことが重要だと思いますが、やはり首脳は首脳として、大いにやっていただきたいと思います。

秋の政局に風波は……

−先月の小泉絵理の訪朝についてお伺いします。
当初と追って世論調査ではそれなりの評価も受けて、支持率も上がったりしましたが、やはり家族会などには、帰ってきた二家族と曽我さん問題が決着すればそれで幕引きになるのではないかという心配がものすごく残っているようです。家族会が総理大臣に文句をつけて叩かれるような形になりましたが、やはりまた新たに調査するとは言っていますが、英際には北朝鮮は 今までにもなかなか実行してこなかったので、結果的に幕引きと同じことになってしまうのではないかという懸念が残っていると思います。
この間の小泉さんの訪朝はどういうふうに評価されていますか。

二階 相手のあることですから、我々の側から、行った方がよかったとか、行かない方がよかったということを言ってみても仕方のないことですが、私は機会あるごとに接触することは大事だと思います。今の北朝鮮と日本の状況からすれば、日本の総理大臣が出向いていくこともやむを得ないと思います。しかし、二回行ったら一回くらいは、もし日本に来られなければそれこそ第三国でもいいですから。そこに来てもらって許し合うとか、そういうことを一つひとつ言ってみる。日本の主張がなければダメですよ。向こうの喜ぶようなことだけではダメですよ。おコメをさし上げたり、いろいろな援助を約束したりすることだけでは……。そこは、やっぱり堂々と日本へ来てもらうようにしなければいけません。
 私も、金日成の八十歳の誕生日に、行って見てきたことがあります。北朝鮮という国はなかなか容易なものではないと思いました。ですから、小泉総理のご努力というか、決断は、これは高く評価します。思いきって行かれるというのは、これは容易なことではないというふうに思いますが、トップの外交ですから、そこはもう少し慎重な積み上げがあってもいいのではないか、そういう意見は巻にもありますが私は、行かないより行ってこられた方がよかったのだろうと思いますね。だいたい金正日なるものの存在、正体を確認してきただけでも、よかったと思う。
 それと、これは韓国の閣僚から聞いた話ですが、決定的なワンマンで、統率力を持っていて、この人の判断がなければ右にも左にも、前にも後ろにも進まない国だということを言っておられたのですが、まったくその通りなのでしょうね。ですから、会える人は小泉総理だけですから、小泉総理にそこはひとつ、ここまでやったのですから、いっそ完結編までがんばっていただきたいと思います。

−最後に、参議院選挙の応接で既にあちこち走っておられると思うのですが、今回は多少ハードルが低いというか、前回、橋本龍太郎首相(当時)で大敗した彼の選挙ですから、自民党としては非常にハードルの低い選挙だと思うのです。実際に回ってみて有権者の反応はいかがですか。選挙結果はどうなっていくでしょうか。

二階 有権者の皆さんは確かに、自分の将来を見つめて、真面目に真剣に取り組んでいるという気はしますね。ですから、それだけに政治をやる方、候補者も含めて、プレーヤーの方は、その期待に応え得るように一層がんばらなくてはならないという思いがします。今回の場合には、現状維持ができればまあよいということのようですが、私どもは「新しい彼」のグループに、比例区一名、選挙区一名、二人の現職議員を抱えているだけに、なんとしてもこの勝利に全力を尽くし、その延長線上に自由民主党に貢献したいと思っています。

−今回の参議院選挙で大きな政局が起きるということは……。

二階 今までは、衆議院選挙で政局に変動があるというのが普通の常識のようになっていましたが、この頃はほとんど参議院選挙が終わって動きますね。ですから、今回はまだどういう結果になるか分かりませんが、参議院選挙というのは目が離せない選挙です。

−橋本さんも、勝つと思っていたら大敗でしたから。

二階 ですから、参議院選挙の結果によって、政局の帰趨が変わるということは、この頃はむしろ常識のようになってきましたよね。

−その予感はありますか。

二階 今回は、政局が変わるほどの大きな動きではなくて、順当なところで勝たせていただけるのではないですか。

−岡田克也代表になってこれまで女性の支持が低かった民主党に対する女性の支持がじわじわと増えてきていると聞くのですが……。今度はもしかしたらという懸念はありませんか。

二階 当選する人は当選するし、当選しない人は当選しない。党首が誰だとかよく言われますが、私はそういうことはあまり関係がないと思いますね。

−では、参議院選挙後の政局は。

二階 ないですね。岡田さんが日本の政治をひっくり返せるようなことはないでしょう。代表として登場の仕方もおかしいでしょう。やるなら、あそこは菅直人さんの後でストレートに岡田さんが出てくれば、もっと盛り上がっていましたよ。「改革、改革」と言っているのに、かつての自民党の大将を引っ張ってきても仕方がない。これを二大政党などと言ったら、笑われてしまいますよ。

 

このインタビューは参議院選挙前の6月17日に行いました。

 

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